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●「ゆりかごから墓場まで〜LCAに思う」

 最近、環境問題に関するニュースやトピックスに、「ライフサイクルアセスメント(LCA:Life Cycle Assessment)」という言葉がしばしば登場する。

 かつては、環境問題といえば「公害」のことであったが、今日では、京都議定書に象徴されるように、直接・間接を問わず環境に悪影響を与えたり、その影響を引き起こす人間の活動全てが環境問題と把えられ、エネルギー消費量の増大による地球温暖化や、オゾン層の破壊が人類共通の課題となっている。

 LCAとは、製品の、製造、使用、廃棄、リサイクル、輸送などあらゆる段階、すなわち「製品が誕生してから廃棄されるまで」、言わば「ゆりかごから墓場まで」の環境負荷を総合的かつ定量的に把握し、生涯プロセス全体を通じて、環境負荷を低減しようとする手法を言う。

 例えば、自動車の生涯でのCO2発生量は、生産段階よりも走行時の排出量が最も多い。従って、生産ラインでCO2を削減するよりは、低排出ガス車を開発する方が環境負荷の低減にははるかに効果を発揮する。
 また、ガラスびんの容器は、製造段階でのエネルギー消費量が最も大きいため、缶容器のように使い捨てではなく何回も繰り返して使用されるが、環境負荷にとっては、回収時の輸送用トラックの排気ガスや、工場でのびん洗浄時の水の使用やそれによる水質汚濁も視野に入れる必要がある。

 7月に開催された「日経BP 環境経営フォーラム設立記念大阪セミナー」で、トヨタ自動車の環境部長、益田清氏が「企業価値を高める環境コミュニケーション〜環境報告、環境会計、環境広告等を巡って」と題し、講演している。

 初めに、「トヨタでは、自動車とは『生産、使用、廃棄のライフサイクル全てにわたって、少なからず環境負荷を与えている商品である』という認識の下に、自動車ライフサイクル全般で環境負荷の低減を図らなければならないと考えています」と語り、
 LSAについても、「ライフサイクルアセスメントによるCO2の排出量調査で、ガソリン車・プリウス・電気自動車を10年間、10万キロ走行するという前提で、材料の製造段階・車輛の製造段階・実際の走行・メンテナンス・廃棄時にかかる環境負荷をトータルで計算してみました。結果は、電気自動車とプリウスがほぼイコールです。重要なのは、材料の製造から廃棄までトータルで環境負荷を見ていかなければいけないということです」と語っている。

 そして、「企業利益と製品の長寿命化は対立するか」という質問に対して、「製品の寿命を長くすると、売上げが減少することは確かです。従来の考え方でいけば当然、大量に生産し、大量に消費され、早く買い換えていただく方がビジネスしやすいわけです。しかし環境問題を考えていくと、大量生産大量消費の時代は終わったと思います。製品寿命を長くし、長くご愛用いただくという前提に発想を変えなければいけないと考えています」と答えている。

 環境先進企業に相応しい、火の打ち所の無い素晴らしい講演である。原稿担当者は、さぞかし苦労したであろう。

 よもやま話「環境にやさしいクルマとは」で、「メーカー各社は、これまで大した理由もなく横並びで“売らんがための”モデルチェンジをほぼ4年毎に繰り返してきた。多くのユーザーもまたその度毎に買い換えに勤しんできた。」と記した。

 厳しい経営環境や市場動向を反映し、流石に4年サイクルのモデルチェンジは、トヨタですら主力車種を除き影を潜めたが、その代わり、一部改良やら特別仕様車などと言った、購買心を煽るだけの小手先の販促手法が業界に蔓延し始めた。先鞭をつけたのはもちろんトヨタ。8月に入って1社で何と13車種を発表している。
 カタログ一つとっても資源の無駄使いに他ならない。

 “言っている”ことと、“やっている”ことがあまりに違うのでは?と感じるのは私だけであろうか。
 2005年にハイブリッド車の生産を、現在の10倍の30万台に増やすという計画も、“環境”対応というより、“売らんがため”と言うのでは、あまりにも寂しすぎる。(>_<)

(01/08/23 わたなべあさお)

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