●「クルマ1台当りの広告費は5〜7万円!」
9月4日付日本経済新聞は、日経広告研究所がまとめた1999年度の「有力企業の広告宣伝費」調査の概要を紹介している。対象企業4184社の広告費の総額は前年度より2.3%減の3兆5233億円。消費低迷、予算削減が相次ぎ2年連続でマイナス基調となった。
上位20社のランキングは以下のとおり。トップのトヨタは、前年度比15.2%減となったものの、金額そのものは843億円と、2位以下を300億円以上も引き離し群を抜く。ホンダ(2位)、日産(5位)、三菱(10位)もベストテンに入り、マツダも20位と、自動車業界の広告宣伝費の多さが際立っている。
<99年度広告宣伝費上位20社ランキング(カッコ内は前年度順位)
順位 |
社名 |
広告宣伝費(億円)
|
前年度比(%)
|
1( 1) |
トヨタ自動車 |
843
|
▲15.2
|
2( 2) |
本田技研工業 |
516
|
▲ 7.7
|
3( 4) |
花 王 |
512
|
3.0
|
4( 3) |
サントリー |
465
|
▲ 9.5
|
5( 6) |
日産自動車 |
420
|
▲ 7.3
|
6( 7) |
高島屋 |
381
|
▲ 5.0
|
7( 5) |
松下電器産業 |
377
|
▲19.9
|
8( 9) |
キリンビール |
349
|
▲ 6.4
|
9( 8) |
ダイエー |
323
|
▲19.6
|
10(10) |
三菱自動車工業 |
312
|
▲15.4
|
11(11) |
アサヒビール |
305
|
▲ 2.7
|
12(16) |
NTTドコモ |
299
|
10.6
|
13(14) |
資生堂 |
295
|
4.3
|
14(15) |
NEC |
261
|
▲ 3.6
|
15(18) |
味の素 |
257
|
3.2
|
16(13) |
ベネッセ |
256
|
▲11.4
|
17(23) |
ニッセン |
249
|
9.7
|
18(19) |
東京電力 |
243
|
0.1
|
19(26) |
シャープ |
243
|
13.6
|
20(32) |
マツダ |
238
|
22.9
|
さて、この広告宣伝費、クルマ1台当りに換算すると一体どれくらいになるだろうか。昨年の新車販売台数をもとに計算してみた。
トヨタの昨年年間の販売台数は165.7万台。したがって1台当りは50,875円。以下、同様にホンダ:74,000円、日産:55,000円、三菱:54,000円、マツダ:74,000円となる。
何と、1台当り5〜7万円もの広告宣伝費が投入されている。新車の1台当り平均販売価格を約150万円と推察すると、3〜5%に相当する。熾烈な販売競争下で、この金額が販売経費として妥当かどうかは定かでない…、が。
メーカーの開発・生産現場、そして調達・購買現場では1円にも満たない単位で、血のにじむようなコストダウン努力が日夜続けられている。大幅な値引き販売が常態化する中、販売店の新車販売利益率は10%強に過ぎなく、多くは赤字経営を余儀なくされている。
言うまでもなく、インターネットなどIT革命のもたらす新マーケティング手法や新メディア戦略は、コスト削減も含め限りない可能性を持つ。
過去の惰性のまま広告宣伝を続けるとしたら、その原資を値下げや、メーカー・販売店の収益構造見直しに活用した方が余程マシであろう。
(00/09/22 わたなべあさお)
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