●「プレアデスとオリオン」
Car24サイトを開設した昨年11月以来、「レガシィ」シリーズが一貫して見積り依頼件数のトップを占めている。
このレガシィの奇跡的ヒットで、一時の経営危機から復活した富士重工。日産、マツダ、三菱自工など他メーカーの不振を尻目に、2000年3月期末の国内自動車販売は前年同期比5.6%増の29万4000台、海外販売台数も同4.2%増の27万5000台と好調を維持した。
4月には、32年間続いた日産との提携を解消、生き残りをかけ世界最大の自動車メーカー米ゼネラル・モーターズ(GM)から20%(約1400億円)の出資を受けGMグループ入り。
これを機に、「水平対向エンジン」「4輪駆動」の独自技術・商品力を武器に、世界市場で現在より4割多い年間80万台を販売する拡大戦略に打って出る。
富士重工初の乗用車として、昭和33年に発売された名車「スバル360」は、おうし座の6つの星団「すばる(昴)」に因んで名づけられた。以来「スバル」は、富士重工の自動車ブランドとして使われ続けている。
清少納言が枕草子の中で「星はすばる、ひこ星、あか星、夕づつ…」と語ったように、夜空の数ある星達の中でも一番美しい星が、すばるである。
欧米では「プレアデス」星団と呼ばれている。由来はギリシャ神話。ギリシァ一の力持ち狩人「オリオン」に追われて天空の星となった、美しいプレアデスの七人姉妹の物語からきているという。
プレアデス星団は冬になると東の空に現れ、そしてそれを追いかけるように東の山からオリオン座が昇ってくる。
1980年代、富士重工は“拡大”戦略が失敗、経営再建を余儀なくされた。その後の復活は、4輪駆動乗用車という“ニッチ”市場に特化したことにある。
マツダを実質的に支配する米フォードなどに比べ、大人の会社と言われるGMは、今の所は富士重工の経営の自主権尊重に配慮しているようだ。
強力なスポンサーを得ての再度の拡大戦略だが、GMとて所詮米国流の資本の論理が優先する企業。業績が落ちればプレアデスに襲い掛かったオリオンのようにたちまち牙を剥くに違いない。
「ニッチから拡大へ」。GMは、富士重工にとって「両刃の剣」でもある。
(00/07/15 わたなべあさお)
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