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造形の「目標」に、実際どれだけの中身があるのか?ということなんだと思う。
売れ筋のワゴンタイプをあらためてデザインするとき、どんなイメージを持たせるのか?何しろ担当デザイナー氏に言わせれば「まったく先代は意識していない」ということだから、もうどんな方向だってあり得るわけだ。
けれども、掲げたキーワードといえば「Vibrant(わくわく)」や「精密(Precision)」。なんて言うか、最近のデザイン・インタビューではお約束的な言葉ばかりで、新しさや独自性がどこにもない。もう、聞いた瞬間に腰が砕ける感じだ。
たとえば、緩くカーブするルーフの基本シルエットからして、なぜこのカタチなのかと尋ねても「わくわく=躍動感」みたいな回答しか帰ってこない。先代を意識しないのならもっと流麗でもいいし、あるいはボクシーでも構わない筈なんだけれど、そこに「今度はコレなんだ!」という具体的な主張がない。
決してハイウェイスターの「下」じゃなく、登録車のような個性を与えたという標準車のフロントは、Vモーション前提で薄くしたランプやグリルの下の広大な「空き地」が空しい。その間を埋める、ムダに大口を開けたアンダーグリルの一体どこが個性的なのか?
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サイドウインドウはリアへ向けて狭くなり、ピラーの黒いパネルへ集約される。これは日産自慢の「キックアップウエストライン」によるけれど、しかし妙な寸詰まり感を生んでしまった。どうやらそのままの上下幅でリアまで延ばすとキャビンが大きく見えてしまうそう。でも、居住スペースが大きく見えたら何かマズイんだろうか?
ショルダーのキャラクターラインは先代より面質こそ高いものの、そもそも引かれた位置が曖昧だ。ラインがリアランプから始まるのは先代と一緒なんだけど、上下2本のラインに関係性を持たせた先代のような狙いが見えない。
とまあ、いろいろ書いたけれど、要するに、新型はどこかで聞いたようなキーワードを元に、何となく「いまっぽい」要素を散りばめただけに見えてしまうんである。新しいけど、中身がない。
先代は決して名作と呼べるようなデザインじゃないけれど、たとえば前後ランプからの大きな流れを、交差するような強いキャラクターラインで融合するという造形の意図が明快だった。ほぼ同じイメージなのに、一貫性を感じない後継車のお陰で先代のテーマ性が明らかになったのは、実に皮肉なところ。
だから、この新型については、兄弟車の三菱・eKクロスの顔がド派手だとかなんてことは実は大した問題じゃない。6年前にできたことがどうしていまできないのか?これは結構根深い問題なんである。
(19/04/01 すぎもとたかよし)
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