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ホンダらしさって何だろう、と考えたんである。
アクティやバモスがあったとはいえ、いよいよ本格的に商用市場に切り込むんだという強い意志は、ヒットブランドの「N」シリーズとしたことでも十分伝わるところだ。
とにかく、スタッフの熱が高い。デザインコラムのための取材でも、カタチの前に、このクルマの開発がどんな経緯で進んだのかの説明が、詳細な資料映像とともに延々と続く。
当初のパッケージング検証が非常に甘かったこと、そこから現場重視の姿勢に軌道修正したこと、ユーザーへの徹底したヒアリングを行ったこと、そしてその声をいかに取り込んだのか、等々。
デザイン部門でさえこれだから、エンジニアリング部門などえらいことになっているんだろうなと思う。ユーザー、たとえば職人さんの声は極めて具体的な要望であり指摘でもある。それはつまり「機能」として、聞けば聞くほどやることが見えてくる。
たぶん、スタッフ皆が同じ方向を向くことになって、いい流れができたんだと思う。で、やればやっただけ「自負」も生まれてくる。ここまでやり切ったゾ、というような。勢い、取材では「まずこの経緯を聞いてくれ」となる。これを聞いてもらわにゃ話にならないんだ、と。
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使う人の立場にたった開発はホンダの源泉。その意味でN-VANはとてもホンダっぽい。けれども、だ。デザイン取材に出向いた僕としてはこうも思う。「何でこんなにN-BOXに似てるんだろう」「このエクステリア、そんなに機能を感じる?」「ぶっちゃけ、このカタチって新しい?」
ホンダには、常にパッケージからカタチを発想するという伝統があるらしい。ただ、それは「機能が高ければカタチは二の次」という意味じゃないだろう。実際、シビックやビート、ステップワゴンなど、かつての名車は優れたパッケージをより優れたスタイルで包み込んでいた。
N-VANは「スクエア」「しっかり」「フレンドリー」をデザインのキーワードに掲げた。ここに「新しさ」「斬新さ」はないけれど、もちろんそれは大前提での話ということじゃなかったか?
「我々はN-BOXに似ているとは思っていません」という回答の意図は理解できる。けれども、いや、だからこそN-VANには、ホンダらしいと手放しで評価できない少しの物足りなさを感じるんである。
(18/09/20 すぎもとたかよし)
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