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コラム&レビュー

新車心象風景:VW・ポロ

 
 本当に、モデルチェンジは難しいものだと思うんである。

 新しいポロのモデルチェンジに、何か間違いがあるわけじゃない。昨今の流れに沿って「長く、広く、低く」な変更もきっと正解なんだろう。さらに、プラットホームはVWの最新版となったそうで、まさに盤石の進化なんである。


 けれども、日本市場ではどうしても5ナンバーの話は出るわけで、メディアでは、新型の情報が入ると「いまのうちに現行車を買っておいた方が」「駆け込み需要がおこっているらしい」なんて記事があちこちで見られたんである。

 で、僕も先代に好印象を持っていた一方、新しいポロにピンと来るものはない。ただ、それは単に3ナンバーになってしまった、幅が1700ミリを越えてしまったということじゃあない。それを含めて、全体の佇まいが変わってしまったからだ。

 先代は、5ナンバーサイズの中で、コンパクトさに加え、合理的なパッケージングと堅実さを追求したスタイリングだった。だから、過度にワイド感を演出するようなこともなく、端正なフロントランプや正方形に近いリアランプは適度な縦横感を生んでいた。


 
 クルマには、そうした3サイズの絶妙なバランスによって生まれるクオリティ感があると僕は思っている。質感を感じる佇まいと言ってもいい。豪華さ云々とは異なる、もっと本質的な質感だ。先代にはそれが確実にあった。前方から走って来ると「お、あれは?」と思わせる独自のシルエットが。

 新型にはそれがない。変更されたサイズどおり、低くワイド感を強調したボディにポロとしての個性はなく、単にひとまわり小さいゴルフになってしまった。意図不明の波形のアクセントが入ったフロントランプはトロンとしていて、ボディ全体をよりボンヤリさせる。

 もちろん、高いプレス技術を訴えるキャラクターラインをはじめとした作りの良さは一目瞭然。カラーパネルを使ったインテリアも含めて、もはや「大衆車」の次元じゃない。コンパクトクラスでも手を抜かない姿勢に、いまのVWの勢いを感じる。

 けれども、それは先のようにクルマ全体の佇まいを左右させるものじゃあない。小さなゴルフ感こそ増すけれど、個性を磨いたりはしない。

 豪華にはなったけれど「らしさ」が消えたというモデルチェンジは少なくない。その「らしさ」の内容は様々だろうけど、ポロについては、3サイズが醸し出すコンパクトカーの質感と佇まいだった。だから、やっぱりモデルチェンジは難しいんである。

(18/05/06 すぎもとたかよし)


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