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それはまあ、次元の低い話ではあるんだけど。
N-BOXヒットの要因は、トールワゴン後発組による使い勝手のよさに加え、カッチリと一種の威圧感を持つボディが、とりわけ女性に人気だったとも聞く。
ところが、新型は一転乗用車感を強く意識し、より上質な方向に若干のシフトをしたんである。威圧感とともに、初代特有の道具感まで薄まってしまったけれど、そこは豊かな面でカバーすると。
コンセプトカー「EV-STER」を手がけた担当デザイナーは、デザインはできるだけシンプルにしたい、ムダな主張はするべきでないと直球な考え。だから、新しいN-BOXでも、カスタムの表情には相当苦心したんだそう。
で、発売1ヶ月の受注は5万2千台と絶好調。もちろん、初代の流通数を考えればスタート時点での判断は危険だけど、いきなりの買い控えはなかった。仮に標準車の割合が先代と同じなら、ひとまずデザイナーの意図が伝わったといえるところだ。
一方、ステップワゴンのスパーダは、初期の想いが届かなかった格好なんでる。
現行のステップワゴンは、できるだけプレーンなボディを目指したいというデザイナーの意向が反映されたもの。標準ボディはもちろん、それはカスタムにも徹底され、メッキグリルとは異なる表情にトライした。
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けれども、これが不評だったらしい。というか、有名評論家までもが「ステップワゴンは小さく見えるデザインがダメ」などと書く有り様。ハイブリッドなど、エンジン選択のミスも相まって販売が伸び悩んでしまった。
これを失敗と判断したホンダは、スパーダをいまどきのギラギラ方向にシフト。ただ、それでもライバルのカスタム系に比べると、メッキの面積を最小限に止めたいというデザイナーの意志が見られ、最後まで抵抗したことが伺える。
ホンダは、かつてもエリシオンで同じ経験があるけれど、日本市場の残念なヤンキー嗜好に加え、評論家までがこれを後追い肯定する状況に、いまでも次元の低い格闘が続いているみたいだ。
「こんな下品なデザインは絶対イヤだけど、仕事だから仕方ない」なんていうデザイナーは、果たして日本以外のメーカーにもいるんだろうか?
(17/10/09 すぎもとたかよし)
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