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写真だけだけど、デトロイトショーでの日本メーカーについてデザイン雑感を。
前回東京ショーのレクサスLF-LSは、神経症的にラインを増やして伸ばす現行ラインナップに対し、基本造形は踏襲しつつ、いかにムダなラインを減らして行くかがテーマかと解釈していたんである。実際、少ないラインで巨大なボディを表現できていたと思うし。
今回の量産型も大きく変わらず発表された。コンセプトに比べてサイドボディのラインが若干強調され、フロントグリルがキツくなったり、あるいはランプ周りが煩雑に感じることで、コンセプトにあったある種の優雅さは消えたけれど、まあ範囲内ではある。
たとえば、LSとIS、あるいはSUVでは造形のアプローチが違うだろうからまだ何とも言えないけれど、妙な奇抜さを狙わないやり方が今後の方向であればいいと思う。まあ、それじゃあ新しさを出せないんだと言われそうだけど。
カムリは、現行型やカローラ、マークXのマイナーチェンジを見てそれなりの想像をしていたけれど、ある意味それを上回っていた。
やたら引き伸ばしたランプや大口を開けたアンダーグリルは、マイナーチェンジで顔を激変させるための緊急避難的な方策と思っていたら、オールニューでも同じことをやるっていうのがとにかく驚きだ。これだけ尖っていながら、個性のカケラもないのは残念というしかない。
ボディは前後フェンダーを強調しながら、それと衝突するかのようなキャラクターラインが引かれている。きっと「豊かな前後フェンダーを1本の線で結ぶ」みたいな理由なんだろうけど、それはどうかと。その勢いは止められず、ついにDピラーにまで線を走らせてしまったのがすごいところ。
オデッセイは、なるほどいまのホンダならこんなことにもなるのかと思わせる。
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北米用として、荷室を大きく見せるこのやり方はあるとしても、リアに向けて下りるキャラクターラインは思い付き感が強く中途半端だ。しかも、このラインは周囲が凹面で、あたかもつまみ上げたようになっていて実に気持ちが悪い。
さらに、ボディ下のラインも同様だから、サイドボディ全面がうねっているように見えてしまう。どうしても上下2本のラインが欲しいなら、なぜもっとシンプルに引かなかったんだろうか。
一方、サイド面がこんなことになっているのに、フロントは相変わらずの没個性顔なので何ともチグハグ。シルエット全体は何てことないミニバンそのものだから、北米向けとしてある種のダイナミックさは必須としても、もっとスッキリまとめればよかったのになあと思う。
日産ブランドのVモーション2.0は、次の世代のデザインモチーフらしい。
より大きくなったV字グリルは、単にグリルの中にVが入っているということじゃなく、グリル全体で表現しようという意図に見える。それが成功するか否かは、もちろんボディ全体のバランスが鍵を握っているのかと。
そのボディは現行のラインナップに比べ、直線の活用が目立つ。先日、セレナの取材時に、いま日産が掲げる「エモーショナル・ジオメトリー」は、情緒的なものの中に幾何学的な要素を組み入れるという話があったけれど、たぶんこれがその一環なのかなと。
幾何学的というのは、ひとつにゴーン就任時に輩出した数々の佳作をオマージュするという意図もあるそう。曲線に直線を交え、比較的分かりやすい造形にしたのはそのせいかもしれない。ただ、このコンセプトを見る限り、シンプルというのにはまだ遠い。
デトロイトの日本勢は、偶然なのか、どれも情緒過多のものが目立つ。BMW、アウディ、VWなどが、よりシンプルな表現を目指してラインを整理し、面を磨き込んでいるのとは対照的だ。
この差は一体なにを示しているんだろう?
(17/01/12 すぎもとたかよし)
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