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これが日本のコンパクト、とりわけ軽規格へのいい刺激になればいいと思う。
魅力はあったけれど、歴代の3ドアハッチではなかなか「一家に一台」に対応できないところ、満を持しての5ドア化で、いよいよ実用性を手にしたと。
さらに、インポーター自ら「戦略的」とする180万円台からの設定で、財布にもより現実的となった。もちろん、「軽で十分」という圧倒的ニーズを考えれば、特別天井は高くなくてもサイズに大きな不満もないだろうし。
そうやって国産コンパクトと同じ土俵に立ったと思えば、欧州車らしい作りは、そのまま強みになるところがおもしろい。
エンジンは、軽はもとより、たとえばパッソあたりより力強いターボ仕様だし、ミッションはデュアルクラッチを標準とし、特別仕様ではMTも用意した。
インテリアは、高級感を中途半端に狙って失敗している国車勢を尻目に、ボディカラーに沿ったポップなカラーをインパネ、ドア内張り、シートにまで施して独自の質感を打ち出し得ている。
サンクターボをリスペクトしたリアハッチを始め、ボディに安っぽい処理は見当たらず、全身に新しいルノー・ファミリーの特長を備えている。いちいち引き合いに出してナンだけど、これでパッソの上級グレードと20万円差なら説得力もあるってもの。
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いや、パッソやマーチ、フィットあたりとの競合というよりも、さらに一回りコンパクトなサイズながら、日常使いとして我慢や不足のない商品を「当たり前に」作る、その自然な姿勢が清々しいんである。
だから、高い技術力を有しながら、おかしな規格のおかげで最終的に寸足らずな商品に止まるニッポンの軽などは、この自然な取り組みをいま一度参考にしてはどうかと思うわけだ。
単純な話、現行の軽ボディにこの0.9リッター過給エンジンを載せるだけで、どれだけ余裕のあるコンパクトカーになることか。もちろん実用燃費も含めて。
トゥインゴが魅力的に見えるとしたら、クルマ作りのプロが「これはこうした方がいいだろう」という、ごく当たり前の発想を、素直に商品にまとめているところなんだと思う。
もちろん商品である以上、コスト管理もしっかり行っているんだろうけれど、一定のクオリティ維持とのバランスがうまく、安普請に陥るような価格設定に走らないのもまた自然だ。
そう考えれば、2016年のいま、最新の自動車技術やその蓄積を使えば、このくらいの商品はで決して特別なものじゃないとも言える。妙な規格に止まったり、旧態依然の商品ヒエラルキーにしがみつくか否か、だけなんだと思う。
あ、そうそう。リアエンジンという方式が、馴染みがない故に購入動機へのネックになるのかどうか、これは正直まだ読めないところなんである。
(16/08/11 すぎもとたかよし)
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