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久々に面白そうなコンセプトカーなんである。
新世代プラットホームを使う、文字どおり新しい世代のボルボを提示する2台は、あっけない発表とは裏腹に、内容のインパクト、とりわけエクステリアデザインのそれはかなり大きかった。
1年半ほど前にヘッドハンティングされたデザイナー、トーマス・インゲンラート氏は、キャリアのほとんどをVWグループで過ごしたそう。アウディやVWブランドの経験はもちろんのこと、個人的にはシュコダでの仕事が今回大きく影響しているように思える。
シンプルなラインが特徴のVWグループの中でも、とりわけシュコダは数年前から「クレバー」を造形テーマに掲げており、たとえば現行のゴルフやパサートの精緻な作り込みによるシンプル路線とは、またひと味違ったテイストを持っている。ホワイトの端正なボディはそこに近いイメージを持つ。
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ボルボの現行各シリーズは、いまどきの曲線ボディにかつてのテイストをうまく採り入れて成功したけれど、新しい2台は、逆に直線基調に戻した上での再解釈に見える。ただ、たとえばルーフは緩やかな曲線だし、サイドボディも張りのある面を持っていて、単調な直線ということではなく、そのミックス加減が新鮮だ。
このあたり、質実剛健なボルボの伝統を再構築させるのに、VWの経験を実に巧妙に盛り込んでいるのが心地いい。現行車から採用しているヘッドランプのトールハンマーも、なるほどこういうことだったのかとあらためて納得できたり。
もちろん、量産型への落とし込みが正否のポイントではある。特徴的な鋭いエッジをどこまで再現できるのか、直線基調が退屈さに陥らないよう質感をキープできるか、などなど。
久々の直球勝負な試みは、もう2017年には市販型が現れるというから、今後しばらく期待してみたいと思うんである。
(16/06/06 すぎもとたかよし)
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