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子会社化の理由なんて、そう複雑なもんじゃないんだと思う。
コンパクトカー作りの技術を共有するとか、インドなどアジア圏でのシェアを確保するとか、いい加減聞きあきた「グローバル」なんて言葉を使って説明されたトヨタによるダイハツ完全子会社化の説明は、まあ企業としては当たり前な内容だ。
だから、そんなところを詮索して”したり顔”をしたところでたぶん面白くも何ともない。「ダイハツの名前は絶対になくしません」なんて章男社長の言葉が大きく取り上げられること自体、すでに退屈だし。
この手の提携や買収といった話では、より単純にユーザーに恩恵があるのかないのか。これを冷静に考えられるのであれば、そっちの方がいろいろ見えてくるものが多いと思うんである。
たとえば、ボディや走行性能の底上げを怠らない真面目なダイハツの軽に、トヨタ傘下になることでどんな変化を期待するだろうか。
個人的な意見なら浮かぶことはある。まず商品企画あたりで、ダイハツは個性的商品を出すけれど、同時に思い込みが少々ズレていたり、あるいは企画自体が寸足らずな面も少なくない。
たとえば、現行コペンは着せ替えというこだわりが実際のニーズと噛み合っていないとか、ウェイクのように勢いやり過ぎちゃうとか、キャストのように展開自体に無理があるとか。
そのあたり、ある意味真逆のトヨタ的営業至上主義でもって洗い直してはどうかと思う。もしかしたら、両社のミックスくらいでちょうどいい塩梅なんじゃないかと。
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それから軽の実燃費向上とか。まんまTHSをとは言わないけれど、その応用技術でスズキのエネチャージを遙かに越えるミディアムHVなんて面白そう。乾いた雑巾を絞るようなモード燃費じゃなく、パワーと実燃費が正比例する軽の新しいパワーユニットとして。もちろん、システム出力は64馬力オーバーってことで。
一方、コンパクトカーをダイハツに任せるという話では、軽の作り込みのよさをそのまま引き継いで欲しいなど。
ダイハツは、もともとシャレードやストーリアなど魅力的なコンパクトを作ってきたわけだし、パッソ・ブーンみたいなことはもうやめて、ヴィッツも含め、丁寧な作りで質の高い小型車を提案してはどうか。マツダ・デミオを出し抜くような。
とまあ、すべてはたとえばの話ではあるんだけど、肝要なのは、ユーザーにとって本当に恩恵のある具体的な提案を思い描いてみることなんだと思う。
最近、やたらと「いいクルマ作り」を口にするトヨタが、なぜ他社との提携や子会社化を進めるのか。共同開発やら委託生産が、果たしてその近道だと確信しているのか。それを具体的なアウトプットで検証してみると。
ここに来て、下請けからの仕入れ額を半年ごとに値下げさせる慣例を再開したトヨタ。「ワオ!」なんてカッコのいいことを言ったところで、結局はコスト削減が目的であってゴールなんだろと思わせる。
いち企業の子会社化のような大きな変化は、そのあたりの実像を結構浮き彫りにしてくれるとは思うんだけど。
(16/02/07 すぎもとたかよし)
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