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見ている次元が違うんだろうな、とは思うけれど。
雑誌『カースタイリング』が行っている日本カーデザイン大賞の選出。2015ー2016の今回は、量産車部門がマツダ・CX-3、コンセプトカー部門がヤマハ・スポーツライドコンセプトとなった。
CX-3は、好調マツダが「デザインを先に考えた」というくらいの入魂作。ベースになったデミオが、テーマを消化し切れずズングリと残念な感じになってしまったのに対し、その”失敗”を覆い隠すかのような仕上がりなんである。
なんだけど、個人的に気になったのは、誌面上の対談でのトヨタ・シエンタとスズキ・アルトの扱い。
シエンタは取り上げるべきクルマとして結構な字数で語られたけれど、最終的にはあくまでも営業的視点からの偶然の成功例と切り捨てられた。さらに、アルトについては「どこがいいの?」で終わりだ。
いや、べつにここでシエンタやアルトの応援をしようって話じゃない。何て言うか、そういうことになってしまう空気に違和感を持ってしまったんである。
一方、コンセプトカー部門はほぼマツダのRX-ビジョンをどう見るかが誌上で展開され、これはゴールデンクレイ賞に持って行くこととして、大賞にはヤマハが推された。
こっちで気になったのは、スポーツライドコンセプトのどこがどういいのか、具体的な話がほとんどなかったこと。ゴードンマーレー社提唱のボディ構造や、四輪進出による新たな可能性など、どちらかと言えばその存在自体が評価されたようにも見えた。
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いや、これまたヤマハにケチをつけようって話じゃない。ただ、スポーツカー的王道まっしぐらのボディのどこが評価点なのか、そこは語らずのままの進行に違和感があったと。
言い方は難しいけれど、たとえば多くの自動車評論家、あるいは雑誌メディアが「スポーツカー大好き」なのと、これはどこか似たものを感じるんである。
審査メンバーは、当たり前だけどデザイン誌に登場するべき経歴の持ち主で、元メーカーのデザイナーにしてもジャーナリストにしても、まあデザインのプロに間違いはない。これまで数え切れない程のカーデザインを見聞きし、あるいは評価してきた専門家だ。
だから、きっと見ているレベル、次元が、たとえば僕のような素人感覚のライターなどとは比較にならないんだろうと思う。もう、スタート地点からして違うと。
けれども、そのスタート地点のかさ上げ部分には、どこかある種のスマートさ、スタイリッシュさ、もしくはスポーティさなど、「デザイナーあるある」な世界を前提とするバイアスを感じてしまうんである。
だからといって「ユーザー目線のデザイン論」なんてものもないわけで、結局求められるのはバランス感覚なのかもしれない。プロ・業界的にはこっちでしょうとか、これは見なくていいよね、なんてお約束や風潮があるとしたら、そんなものはいらないと今回は感じたんである。
まあ、中途半端にデザイン好きなお前の考えすぎだと言われれば、たしかにそのとおりなんだけれど。
(16/01/11 すぎもとたかよし)
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