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コラム&レビュー

クルマのまわりで:フランクフルト雑感(その2)

 
 ジュネーヴでik-2と呼ばれていたバレーノは、これからの理想的なコンパクトカーの提案・・・だったか。


 同時出展のik-4がアルトに準じて実にキリリとしていたので、ik-2のユルさはかえって際立っていて、どうして同じメーカーからこういう対照的な提案が出てくるんだろうと思ったんである。

 だから、いくつかの雑誌での「これが次期スイフトだ!」なんてイラスト入りの記事を見て、いやあ止めておいた方がいいんじゃない?と思っていたところで。

 けれどもバレーノは、どうやら欧州B/Cセグメント市場への新たな投入というアナウンスになっている。なので、こいつはスイフトのお兄さん的な存在として現地に特化しつつライバルと戦うのかと。

 たしかに、ルノーのルーテシアやシトロエンC3、あるいは新しいオペル・アストラなど、最近の欧州コンパクトは基本エモーショナルな方向になっている。バレーノも、長そうなホイールベースに載るボディは曲線と曲面を多用していてそれっぽいけれど、ただ、まとまり感が足りないとなればこれは話が別なんである。

 インフィニティQ30は同ブランド期待のコンパクトハッチとしての出展だ。


 エッセンスのデザインテーマをしっかり練り込んだボディには、外寸の割に深い掘りのキャラクターラインが走っていて、これが見所なんである。

 けれども、この手の表現は「ちょうどいい加減」を見つけるのが結構難しい。うねりも深さも、それが特徴となれば「もっともっと」となり、新しいモデルほど大胆になるし、逆に言えば前のモデルは早々に陳腐化してしまうのが難点だ。

 
 これはレクサスがいい先例で、激化が加速するスピンドルグリルの造形は、ちょっと前のGSやHSあたりをも、すでに「古い」と感じさせてしまっている。

 インフィニティも、Q30がこれなら次はもっと・・・という悪循環に陥ってしまうんじゃないか。いやいや、中村史郎さんはもっと思慮深い。モデルによってちゃんと作り分けを図るか、あるいは適当なところで次のフェーズに移行するよ、ってことならいいんだけど。

 トヨタのC-HRは、なかなか理解が難しいコンセプトカーだ。


 もちろん、人気のコンパクトSUV市場に満を持して参入したいという意図は分かりやすいけれど、一方でそれが何でこんな恰好をしているんだろうと。

 そりゃあ、日産のジュークが意表を突いたデザインで市場に受け入れられているのは興味深いところだけど、じゃあウチもってことで、似たような近未来方向のコンセプトカーを作ったとしたならいかがなものかと。

 だって、いくらキーンルックを持ち込んでいるからって、このカタチに現在のトヨタである必然性が感じられないでしょう。たとえば、前後ホイールアーチを強調するのはSUVとして珍しくはないけれど、こんな大仰な見せ方はトヨタとして実に唐突だし。

 さらに流行のレイアーな処理や、ジュークっぽいブーメラン状のリアランプなんかを見ると、何ていうかお手軽だなあと思うんである。まあ、そんなことより、多くの見学者が単純に「カッコいい!」と思ってくれればそれでいいのかもしれないけど。

(15/09/29 すぎもとたかよし)

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