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コラム&レビュー

新車心象風景:スズキ・ラパン

 
 個人的には憎からずの部分があるクルマなんだけど、どうしてもストンとは腑に落ちない。


 以前にも書いたことがあるけれど、そもそも僕は「女性向けのクルマ」なんていう発想には反対だ。軽が国内市場の主役になり、バリエーションを増やす中で、勢いそういうことを考えるのは分からなくもないけれど、しかしそれはやっぱり安直なんだと改めて言いたい。

 もちろん、女性の意向なんてどうでもいいってことじゃない。男だ女だという考え方の志それ自体が低いんである。しかも“若い女性”なんて限定はなおさらのことなんである。

 コンパクトカーとして、たとえばミニやフィアット500は「可愛い」クルマだけど、それはもともとそういう方向のクルマなのであって、べつにニッポン発の「カワイイ」を狙ったわけじゃない。けれども、結果的に女性が乗っていればとても似合うクルマではあると。

 いや、日本車だって2、3代目のマーチや初代ヴィッツなんかはそういうクルマになっていた。要はデザインのクオリティを含めた完成度が高ければ女性のアンテナにしっかり届くし、同時に男性にも受け入れられる。「カワイイ」はニッポンの文化などと、“女子”をそのまま持ち込む発想は、だから目指すゴールもその程度に低い。

 しかしもっと深刻なのは、それを女性自身が開発していることだろう。お気に入りのカフェや雑貨のモチーフを「私たちにしか分からない」と直に投入するのは、何だ女性は結局その程度の発想しかできないのかと思わせるんである。え、それでいいんですか?と。


 
 仮に女性のためのクルマがアリとして、たとえば平均的に体格の小さい女性に有利なテレスコピックがつかないとか、周囲の状況把握をより容易にするべくバックミラーやドアミラーの形状・大きさにこれといった工夫がないのはどうしたことだろう。

 高い通信機能は「スマホっぽいお洒落なナビ」にするだけじゃなく、女性を狙った犯罪に対する防犯・通報機能を設けたって決して損はしないんじゃないか。

 さらに、テーブルトレーやアルミホイールは上級で、下は簡素な装備という昔ながらの古くさいグレード展開、あるいはオンナにはターボは要らないと言う固定概念に女性チームは異論がなかったのだろうか?いや、そもそも軽枠いっぱいのボディ自体に疑義はなかったのか。

 今度のラパンは、先代までのイメージを引き継ぎながらも破綻なく新しいエクステリアを提案していると思う。インテリアも、すでに女性評論家諸氏が書いているように、女子向けであってもベタベタな表現にはなっていないのは好感が持てる。モノトーンの内外装が主流の中、ボディやインテリアカラーに幅広い選択を展開することには僕も賛成したい。

 個人的に憎からず、というのはそういう部分を持つからだけど、しかし最終的なまとめを「女子」に集約しているのは実に残念なところだ。面白い要素が出せるのは確かなんだから、志をもう一歩上に設定してはどうかと思うんである。

(15/06/29 すぎもとたかよし)

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