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トヨタとマツダの技術提携強化には緒論あるみたいだけど、とりあえず日本のユーザー、ファンにとってどうなのかが肝要かと。
その点、すでに先行していた提携内容は悪くなかったと思う。トヨタからのHVシステム供与は、重要部分とはいえ動力源の一部であって、たとえばエンジンそのものじゃなかったのは印象として許容範囲だと思わせる。
また、デミオセダンのサイオンブランド投入は、あくまでも北米市場での事情であって、まあ海の向こうの話として結構なフィルターがかかった感じだ。いずれも両社のファンが、こめかみの血管を膨らませるようなことはなかったんじゃないか。
これは、インフィニティのバッチをつけた日産のスカイラインが、メルセデスのエンジンとミッションを積んで出てきたときの空虚な感じと大きく違うところだろう。要は、それぞれの市場内で「やっていいこと、悪いこと」の見極めとして。
たとえば、トヨタがスカイアクティブ・ディーゼルを欧州市場の小型車で展開するのであれば、すでに投入済みのBMWエンジンの延長として、納得できるかはともかく比較的受け入れやすいとか。
けれども、「スポーティ・ディーゼル!」なんてふれこみでヴィッツやシエンタに1.5、レクサスISやマークXに2.2リッターのディーゼルが積まれたりすると、恐らく興醒め度はグッと上昇するんじゃないか?もちろん、トヨタの販売力でしっかり売れるだろうから、さらになんだかなあ、と。
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それは、マツダがカルフォルニアを筆頭に規制対策としてトヨタ製のPHVを投入したり、あるいは将来を見据えてFCVに取り組むことが、トヨタファンにもマツダファンにも「微風」に過ぎないだろうことと随分違った話だろう。
もちろん、クルマの商品価値はエンジンだけでは決まるわけじゃない。デミオとヴィッツに同じエンジンが載れば、かえって商品性全体の差が浮き彫りに・・・なんてことも考えられる。もしかしたら、マツダはそのあたりに勝算というか自信を持っているのかもしれないし。
一方、トヨタにはグループでディーゼルエンジンの製造ノウハウがあるので、この提携にはもっと別の理由があるんじゃないか、なんて推測もある。なんて言うか、広い意味での「種まき」みたいな。
経済評論家はこの提携話によってマツダがトヨタに「飲み込まれる」可能性があると予想する。仮にトヨタが上出来のスカイアクティブ技術を他社に渡したくないと判断した時点で、資本提携に踏み切るのではないかと。
ただ、「飲み込む」っていうのは一体どういうことなのか、それもまた不明だ。言葉のイメージはマツダの自由がなくなる感じだけど、スバルの例を見れば必ずしもそういうことは言えないだろうし。
どうやらBMWとはスポーツカーの協業が開発段階にあるようだし、やっぱりここは次期RX-7が共同開発になってマツダでも86・BRZを再現とか、雑誌に出ているように新コンパクトFRスポーツにスカイアクティブ? なんていうのなら、いかにもモリゾウ氏が考えそうなことだ。
ある意味、少なくとも日本市場ではそんな程度で終わるのがいいんじゃないかと思うんである。
(15/05/31 すぎもとたかよし)
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