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方向性が明確であるというのは、たぶんこういうことなんだと思う。
デミオベースという話が事前にあったときは、たとえばVWのクロス・ポロ的なイメージが頭に浮かんだけれど、実際にはそういう話じゃなかった。大きくはないけれど、3ナンバーの伸びやかなボディは、どちらかというとクロス・アクセラな感じだ。
そんなCX-3には、コンパクトSUVとしての新しい提案がないという指摘が一部にある。なるほど、パッケージや使い勝手、あるいは機能にコレといった新機軸は見当たらない。内装はほぼデミオのままだし。ジュークやヴェゼル、あるいはフィアット500Xなどのライバルとしては、いささか寂しいという意見もわからないではない。
けれども、ラインナップを貫く明快なデザインテーマや、丁寧な内外装、新世代プラットホームに最新ディーゼルという、いまのマツダが推進する商品テーマでコンパクトSUVがまとめられたこと自体が提案であり価値である、という考え方はできるだろうと思う。
つまり、妙な思いつきを無理して盛り込まなくても、いまの商品作りの思想でまとめることで「いいクルマ」ができるとしたら、実は日本車では結構稀有なことであって、それこそが他社との違いだと。
スタイルも、ずんぐりしたデミオの再来を危惧していたけれど、前後から走るキャラクタ―ラインは比較的素直に伸びて、ボディに妙な谷を作ることなくスッキリしている。もちろん、CX-5より小さいのに、より真横へ伸ばしたフロントランプの安定感もいい効果が出ているし。まあ、リアピラーのブラックパネルが安っぽいとかはあるけど・・・。
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こういうアプローチは、欧州でシェアを維持するマツダらしいと言えるのかもしれない。たとえば今年の欧州イヤー賞のパサートは、新規のプラットホームと高品質のVW最新デザインで、「iF ゴールドアワード(デザイン)賞」も同時受賞している。飛び道具的な新提案はないけれど、最新のデザイン言語を中心に、全体として「新しいセダン」像を打ち出しており、真っ当にちゃんと作りましたっていうことも含めて、CX-3に通じるところは結構大きいかと。
で、CX-3に足りないものを感じるとしたら、個人的にはカラーとエンジン・バリエーションなんである。
カラーはマツダのラインナップ全般に言えることだけど、イエローやグリーン系の配色がほぼないのがもったいない。まあ、当面の「SHINARI」系デザインには似合わないという判断なのか、あるいはそれぞれモデル後半にとってあるということなのか?内装も黒か白だけだし。
エンジンは、SUVとして高トルクのディーゼルにわざわざ絞ったのだから、ここで2リッターのガソリンを追加してもあんまり意味がないのは分かる。だったら、1〜1.2リッターくらいのダウンサイジング・ターボで200万円くらいに抑えれば、別グレードとして成立するんじゃないかと思うんだけれど、マツダが小排気量ガソリンターボに消極的なのはご存じのとおりだ。
まあ、ここはさらに効率を高めるというスカイアクティブの次のステップを待つということなのかもしれないけど、実はそこがマツダの好調持続のポイントでもあるんじゃないかと思ったりする。苦労してガソリンエンジンの熱効率を上げても、それ自体は意外に商品力にならないのは現状で明らかになったことだし。
(15/04/14 すぎもとたかよし)
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