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うーん、何かこう、どこにも引っかからないんである。
乗用車タイプの3列ミニバンをもう一度成立させようという企画は、3、4代目のオデッセイやストリームの現保有者数を考えればまだアリで、さらに世界戦略車に位置づければなおのこと、らしい。
加えて、「ちょうどいい!」筈のフリードが立体駐車場に入らないとなれば、そこにもまた需要はあるだろうと。そして、フィットから展開の「エキサイティングデザイン」と最新のHVを持ってくれば、結構いい感じの仕上がりになるじゃないか、なんて。
ただ、そうやってできたジェイド、どうにもとらえどころがない。ニューカマーとして「何者なんだコイツ」という単純な疑問や、中国市場メインだろという「誤解」なども大きいにせよ、それだけではない存在感の希薄さがある。
もちろん、このモヤモヤの元凶はエクステリアに大きい。
「マルチ・サプライジング」のコンセプトの元、低全高でダイナミックなスタイリングという意図はまさにいまのホンダ的だ。1530ミリという全高と上下に広い視界を両立すべく、3列シートが納まった大きなキャビンをボディに沈み込ませるという発想も新しい。
そうしてキャビンが下がった分、前後のホイールとそれを支えるフェンダーが必然的に盛り上がりつつ強調される。4つのホイールが強調されるのは、いまどきのダイナミックな表現にとって、デザイナーには願ってもない表現だろう。
けれども、それに沿って微妙な曲線を描くグラフィック下端は、やはり微妙なルーフラインと相まって、どこかとらえどころがないんである。
リアはフィットの兄貴らしく「くの字」に折れたピラーがハイライトで、シャープなグラフィックラインをさらに強調している。ただ、いささか個性を欠いた例の「ソリッドウイングフェイス」が施されたフロントと合わせてみると、これがまた全体をボヤっとさせる。
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ジェイド開発の発端は、2009東京ショー出品のスカイデッキに始まったという話があるけれど、CRーZコンセプトとイメージを合わせたこのスカイデッキは実にいいまとまりだった。よりミニバンに近い印象だったけれど、フロントからリアに向かう流れがまず明快だし、サイド面はシンプルでありながら先進感に溢れていた。
ジェイドはこのスカイデッキに沿って、フィットやグレイス、ヴェゼルのような深く強いキャラクターラインを持たない。そういう意味ではサイズの割にシンプルだけど、とくに要素が足りないとは感じない。また、Aピラーやルーフラインは、細く薄く均一に揃えられていて丁寧だ。
実際、ある評論家は「これほどまとまりのいいデザインは最近見たことがない」と書いていたけれど、たしかに全体を見ても破綻は感じない。
けれども、僕にはやっぱり希薄に見える。サラッとまとまっているけれど、何か「芯」のようなものがない。ほとんど同じコンセプトなのに、スカイデッキにあった明快な動感や塊としての存在感がすっかり抜けてしまっている。
これは、「エキサイティングデザイン」を掲げるいまのホンダデザインの課題じゃないかと思ったりする。勢い余ったラインや、細部の派手な表現がないと新しさを訴えられないという。何か本質を外した方向に向かっている感じで。
ジェイドはきれいにまとまっているけれど、それは普遍性を持った安定感のあるそれとはどうも違う。気持ちのどこにも引っかからないというのは、つまりそういうことなんだと思うんである。
(15/03/15 すぎもとたかよし)
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