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ああ、素直だなあと思うんである。
スバルのWRX S4が登場したとき、僕は、せっかく新型なのに何でこんな「既視感」のあるカタチにしたんだとここに書いた。
左右に広がるホークアイだのヘキサゴングリルだの、スバル最新のスタイリングを盛り込んだと開発陣は言うけれど、既存のインプレッサG4に近似した佇まいは、パネルの流用すら感じさせるものだったし。
もちろん、雑誌などのメディアではそんな声はほとんど聞かれず、大きくなったレガシィに代わり、日本のユーザーのために作った、あるいはスバリストの救世主だとして扱われているんである。
で、話は雑誌ホリデーオートの「ジャパニーズ・カーガイ評判記」だ。ピーター・ライオン氏が海外の自動車雑誌での日本車の評判を紹介するこのページは、たった見開き2ページだけど、毎回実に興味深い。
「コンセプトカーはよかったけど市販車は平凡」「スバルはデザイン部にもう少し予算を回すべき」「新車に古いエンジンを載せるのはどうか?」「新車だけどあたらしいものもあれば古いものも付いている」「ラリーマシンとして優れているのだからカッコよくする必要はない」「CPに優れているのだから室内の質感も許されるだろう」
WRX STIを取り上げた今回は各国のこんな記事が紹介されるんだけど、まあ実に端的で明快なんである。
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ここで面白いと思うのは、スタイルがイマイチ、インテリアの質感が低い、エンジンが古いなど、ネガティブな指摘が少なくないんだけど、それが単なる批判や文句には感じられないところだ。
それは、どこにもエクスキューズがないからだと僕は思う。いいも悪いも、ただただ思ったとおりに素直に書いてある。正直に言えば、とか、こっちを批判したからあっちはホメるとか、変に意図的なところがない。まあ、プロから見ればそう感じるだろうな、たしかにそうだよな、となる。
何ていうか、とても大人な感じだ。いや、これが大人というか、一方で日本の自動車メディアがあまりに特殊で幼稚な世界になってしまっているってことなんだと思う。変におもねたり、くだけてみたり、女子を前面に出したり、あるいは必要以上に専門家ぶったりなんてことがない。
そうやってあるがままのことを、ごく普通に、淡々と書くことで公平なイメージが作られる。メーカーも、ユーザーも、両者が何のひっかかりもなく納得できる情報メディアが実現する。
このページは、わずかな字数で、実に簡単なことだけど日本ではできない世界を明らかにしてくれると。もちろん、ピーター・ライオンという人もまた、そういう意味ではごくふつうのジャーナリストであるということなんだろう。
(15/02/16 すぎもとたかよし)
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