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物量作戦をやってれば希にいいこともあるんだろうな、と。
たとえばSAIやカムリのように、元のコンセプトなんかどうでもいい、とにかくいますぐ売れればいいんだ的な最近のトヨタのマイナーチェンジは、あたかもどこかの首相の空っぽだけど聞き取りやすい演説に似て、メーカーの思惑通りユーザーの心をそこそこ掴んでいるようだ。
それは、フロントやリア周りをやたら鋭角に引き伸ばす安っぽい格好良さや、マークXみたいな派手なカラーによる演出など、何ていうか「これでもか」の物量作戦なんである。
アクアの場合、あきれるくらい売れていることもあって、さすがに造形の変更は少なかった。ま、せっかく台形ベースで安定していたフロントグリルを、無理矢理6角形にして落ち着きのないものにしてしまったけれど、トヨタ流の「新しさ」の演出には成功していると。
で、今回のメインはカラーリングだ。ベースグレードでも4色の新色を用意したのはなるほど力が入っている。この辺、鮮やかなイエローなどを揃えたヴィッツのマイナーチェンジと同じ方向だけど、もともとカラフルさを売りにしていたアクアとしては面目躍如なところだ。
さらに「X-URBAN」なる新グレードで導入した別色パーツ案は、まさに物量な感じ。プラス20ミリの車高アップは「なんちゃてクロス」だけど、その別色を3色も用意し、都合30通り以上としたのはちょっとした驚きで、先行した日産ジュークのパーソナライズシリーズ以上のインパクトを得たんである。
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いや、実際何がすごいって、「この組み合わせはあり得ないだろう」という際どい設定も、とくにメーカー側で削ることなく用意しているところで、もうまさに物量。
で、一連のマイナーチェンジの演出がウワサの新しいデザイン部長の指揮で行われているのかは不明だけど、この勢いには明らかな演出を感じるんである。顔の変更は派手に、色の展開はもっと派手にという意向はたしかに明快で。
残念ながら、その派手な顔の変更は、直近のプリウスαも含めて僕はまったく評価しないけれど、ことカラーリングの展開は、「とにかくやれるだけやってしまえ!」という物量作戦が、部分的に面白い結果を残しているんじゃないかと思う。
もちろん、その展開内容は決して厳選されたものではなく、これまた勢いに乗ったものだけど、しかし幅広い色の展開は従来の日本車に欠けていた部分なわけで、どういう形にせよ、そこに結構な選択肢を持ち込んだのは悪いことじゃない。
さて、アクアの話に戻れば、今回、外装に比べて内装の提案が物足りなかったのは惜しいところだ。
樹脂部分に色を付けたり、ピアノブラック調の装飾を加えたりと手は入れているけれど、何たってアクアの最大の弱点とも言えたあの安っぽいインテリアである。日本一売れているクルマとして、ここは全面刷新くらいの器量は見せてほしかった。ほら、マツダでさえアテンザの内装を一新させたくらいだし。
いやいや、表面的な部分を巧いこと修正して見せるのがいまのトヨタ流マイナーチェンジであることは十分承知しているんだけど。
(14/12/10 すぎもとたかよし)
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