|
このモヤモヤ感は何だろうと思う。
レヴォーグのときに、これって「インプレッサワゴンでしょ」と書いたけれど、そのセダン版となれば、そのまま1周回って来て「これ、インプレッサでしょ」となる。
このたび、そのインプレッサから正式に独立しましたというWRX S4だけど、基本骨格はもとより、基本同じインテリアを見るにつけ「そうなの?」と思う。いくら開発チームも別になりましたなんて社内の都合を聞かされても、だ。
もちろん、レヴォーグに準じたボディをもってして、先代レガシィB4の買い控え需要に対応するという説明は理解できるし、だからG4じゃなくて新たにS4なんですなんて意気込みも分からなくはない。
それよりも、今回はボディ、エクステリアのモヤモヤなんである。端的に言って、実に中途半端なデザインだ。言い方を変えれば新しさが感じられないと。
まず、プロポーションがいけない。Bピラー付近をピークとし、粗く不用意な山なりのルーフラインによるキャビンが実に野暮ったい。スバル自身はAピラーを前進させて流麗にしたと謳っているけれど、明快な3ボックスでもなければワンモーションでもないボディとの組み合わせはまさに中途半端で、全長が4.5m超もあるのに妙な寸詰まり感がある。
ボディ自体はかなりウエッジしているから、おそらくスポーティさや前傾感を出したかったのかもしれないけど、モアっとしたキャビンとのバランスが悪いので、そういう伸びやかさは感じられない。レヴォーグの場合はワゴンとしてルーフが伸びていた分まだよかったけれど、セダンボディはそうも行かない。
|
|
ホークアイだのヘキサゴングリルというパーツの理屈はともかく、フロントは悪い意味での既視感に溢れる。えらくでかいエアインテークはそれを助長しているばかりか、ボンネットを短く見せて寸詰まり感にも寄与する。何ていうか、この既視感は新型っぽさを完全に奪っているんである。
いや、スバルの場合、それもこれも毎回評判のいいコンセプトカーとの落差があまりも大きい故のモヤモヤ感という話なんである。一連のSUVコンセプトは一向にフォレスターに反映されないし、最近のワゴンコンセプトとレヴォーグでは比べようもない。
今回では、昨年のNYショーに出品されたWRXコンセプトとあまりにかけ離れてしまった格好だ。先のキャビンの残念さは、コンセプトカーのクーペルックなスマートさを見ればなおさらというところだ。
もちろん、まったく同じデザインなんていうのは無理としても、近年のコンセプトカーが持つ「キレ」が量産車にほとんど生かされないのが惜しい。WRX S4にしても、たとえばフロントやリアにコンセプトカーのシャープさが残っていれば相当違ったのに、なんて思う。
コンセプトカーと量産車は別なんだという風潮が根付いているのか、どうしても同じにできない事情があるのか、あるいはそもそも違っているという認識がないのか。スバルの本意はわからないけれど、少ないラインナップでこの残念感は痛い。
さて、こうなると今後の興味は次期インプレッサだろうか。WRX S4が独立したというのなら、どう差別化を図るのか? もともと絶妙なコンパクトサイズで出発したインプレッサ、僕としては独自のポジションを取り戻して欲しいと思う。
もちろん、それは最新のスバルデザインであって欲しい。よもや、張り出したフロントフェンダーだけ変えて、WRX S4と同じボディなんてことはないと祈って。
(14/09/02 すぎもとたかよし)
「日本の自動車評論を斬る! すぎもとたかよしのブログ」へ
|