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コラム&レビュー

自動車雑誌を斬る!:期待のヒット誌

 
 雑誌、「ベストカー」がなかなか面白い感じだ。

 日産退社後、各方面で引っ張りだこの水野和敏氏だけど、同誌での新車評価記事もそのひとつ。以前、GT-Rの取材に関してちょっとした行き違いがあり、それが逆に縁となったのが強みのようで、毎号の掲載は同誌のウリだ。

 で、前号では「日欧コンパクト比較」として新型ミニ、スイフト、そしてマーチ・ニスモの3台が取り上げられていたんだけど、とにかくマーチが酷評だったんである。水野氏によれば、ニスモの仕事は街のチューニング屋レベルだと、もう一刀両断。


 面白かったのは、その記事内容を意識してか、数ページに渡る誌面ではマーチの写真がほとんど出てこないところだ。ミニやスイフトは大きな走行写真と、氏のコメントを引用した大見出しがドーンと出ているんだけど、マーチは小さな紹介写真だけで、もちろん酷評の大見出しもない。

 ま、編集の腰が引けちゃったのかと。記事内容はいまさら変えられないけど、誌面としては精一杯酷評ムードを消した感じである。しかも、この記事の次ページは、何と唐突にニスモの紹介記事という、実に分かりやすいオマケ付きなんである。

 さらに囲み記事では、前々号での軽自動車比較についても触れている。どうやら数台の軽の中で、同じく日産のデイズが酷評だったらしく、読者オーナーから“苦情”の手紙が来たと。で、これについては次号以降にあらためて水野氏の真意を載せますとある。


 
 いやあ、面白すぎる。これ、読者の手紙ってなっているけど、まあ日産からも来ちゃったんでしょう、苦情。で、記事は和らげるわ、広告記事は載せるわ。

 そもそも、あのモンスターマシンGT-Rを作った水野氏の評価は、他にない鋭さや厳さがウリの筈なのに、本当にそうなったら慌てて火消しに走るっていうのがツラいところだ。真意が伝わらなかったので後日あらためて・・・なんて、その辺の失言議員と一緒でしょう。

 で、そういう視点で今号を見るとさらに面白い。まだデイズの記事はないんだけど、水野氏のロータリーエンジンの記事の後には、またしても唐突にニスモの広告記事が。しかも、新車であるレクサスNXよりも前に堂々の3ページ!

 クルマ雑誌では非常に売れ行きがいいと言われる同誌は、その勢いをかって「ウチはやりたいことができる」とばかりに、実にバラエティに富んだ記事を展開している。それが勝者の特権であり、同時に読者の期待でもある。

 水野氏は、出身の日産だからこその厳しさであったのかもしれないけど、しかしそういう姿勢は、残念ながらこのヒット雑誌でさえも許されるものじゃなかったと。

 しかし、とにかく期待はデイズの記事だ。果たしてあらためて伝える真意とはどんなものか。対日産、ニスモ的にはどんなフォローがあるのか、ないのか。こいつは相当待ち遠しい。頑張れ、ベストカー。

(14/08/13 すぎもとたかよし)

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