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ワゴンRが出たときか、それ以上の反響らしい。
で、成功の秘訣は、いわゆるプロダクト・アウトの要素が大きかったからかもしれない。
お披露目の東京モーターショー会場で聞いたのは、ジムニーのようなハード方向でなく、もっと使いやすくカジュアルな生活四駆のニーズが少なくないという話だった。そういう声をいつか形にする機会を伺っていたと。
その意味では完全にマーケット・インな発想なのだけど、恐らくは、それ以降の相当短かったとされる開発期間での仕事が、まさにプロダクト・アウト的だったんじゃないかと思うんである。
その好例が、ひとりのデザイナーが描いたとされるスケッチを、ほぼそのまま採用したエクステリアデザインだろう。
ジムニーをモチーフにしたライトやフェンダーなど、聞けばいろいろな意味付けはあるにせよ、全体に違和感のないまとまり具合は合議の末というより、ひとりの明快な主張からだと思わせる。もちろん、ポップなボディカラーや明るいパネルとブラックのコントラストをきかせたインテリアも同じだろう。
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幸運だったのは、短い開発期間の中で優れたキースケッチが描かれたことと、それを採用した責任者がいたことかもしれない。かつ、それをアレコレやっている時間がなかったのもよかった。そうした勢いと流れが、結果的にプロダクト・アウト的な姿勢になったと。
ただ、それにしてもなあと思う。
開発話では「今回は皆が本当に楽しんでやった」ことが強調されているんだけど、どうもそれが気になるんである。いや、言いたいことはよくわかるんだけど、本来、それはすべてのクルマでそうあるべきだと思うので。
たとえば、これが基幹車種のワゴンRともなれば「力が入る」のが当然だと言うのなら、それは違うんじゃないかと。
そりゃあ、ハスラーとワゴンRでは発想のベクトルこそ違うんだろうけど、やっぱり勢いや楽しさがなければおもしろい発想は生まれない。単にネガ潰しの方向や、あるいはお定まりのデザインだの機能に陥ってしまう。ほら、最近の「シルバー加飾」などという貧しい流行はそのいい例じゃないか。
そもそも、エポックメイキングな初代ワゴンRができたのだって、相当な勢いと楽しさがあったからこそなんじゃないか?それがヒット作になったからって、現場から楽しさがなくなってしまったら本末転倒でしょう。だから、「今回はよかった」なんて簡単に・・・
奇しくも、ハスラーがその初代ワゴンRのときと同じかそれ以上の反響だというのは、つまりはそういうことなんじゃないか、と思うんである。
(14/02/04 すぎもとたかよし)
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