|
トヨタのデザインは本当にいい方向に向かっているんだろうか?
ビッグ・マイナーチェンジをするということは、つまり前型が失敗だったという証拠でもある。そりゃそうで、高級ブランドである筈のレクサスと姉妹関係なんて無茶苦茶な企画をやれば、まあ中途半端な結果になるのは明白だったんである。
その半端さの大きな原因だったフロントフェイスのボンヤリ感を払拭させるのに考えたのが、世界最大クラスの長いヘッドランプという企画だ。
何しろ一発逆転が厳命だから、とにかく激変が必須なんである。それは当然だろう。ただ、激変と言ってもその回答方法はいろいろな方向があるワケで、メーカーなりデザイナーのセンスが問われると。
たとえば、ビックマイナーの成功例で知られる日産ウィングロードは、とても分かりやすいカッコよさを表現しながら、同時にしっかりとしたまとまりのよさも備えていたんである。まさにデザイナーの腕の見せ所だった。
一方、世界一のランプであるSAIは、分かりやすいという点では同じながらも、回答内容としてはどうにも子供っぽい。これで文句あるか!な勢いは理解できるけれど、この大人げなさは真木よう子ともまったく釣り合いがとれていない。
|
|
初代エスティマを手掛けたという新しいデザイントップが就任し、トヨタのデザインが変わるという声は大きい。もちろん、本格的・抜本的な変化が見えるのはもう少し先だとしても、しかし最近の“変化”には少々疑問が残る。
氏の提案と聞くスピンドルグリルのレクサスは、GS、ISと急激に異様さを増し、フランクフルトに出品されたコンセプトカーに至っては、もはやクルマとも思えないデタラメな造形になっている。
前後だけ派手なオーリスのイメージは、ほかにもマイナーチェンジしたウィッシュのフロントに通じ、さらにマークIIやらプリウスのG'sとも重なるもので、共通のわかりやすさと子供っぽさに溢れている。そうしてこれが世界一か?というヘッドランプのSAIへつながるんだけど、こうなると「この手」が新しいトヨタデザインの基本的なレベルなのか、と勘ぐりたくなるんである。
いや、そうした共通イメージは、すなわちトヨタ最新のデザイン言語である「キーン・ルック」が徹底しているということなんだろうけれど、たとえば80年代、90年代初めまでのトヨタのわかりやすさなんかと比べると、どうも底の浅いものを感じてしまうじゃないか。
初代エスティマなんかを持ち出すから余計な期待をしてしまうのか、はたまた本番はこれからという話なのか。本当にトヨタのデザインはいい方向に向かうのか、もう向かっているのか?
世界最大のヘッドランプと自慢し、プレスリリースで自ら「カッコイイ」と表現するトヨタから、それを正確に読み取るのはなかなか難しいんである。
(13/10/05 すぎもとたかよし)
「日本の自動車評論を斬る! すぎもとたかよしのブログ」へ
|