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コラム&レビュー

クルマのまわりで:化粧直しはしたけれど

 
 マーチのマイナーチェンジと、デミオの特別仕様車の違いが興味深いんである。

 タイ製へのシフトに挑んだ4代目マーチは、輸入時のクオリティチェックと可愛いカエル色の設定といった配慮も空しく、少なくとも日本市場では過去にない低迷状況を招いてしまった。

 それが理由なのか、早々に行ったマイナーチェンジはしっかり内外装に渡ったもので、できれば何とか挽回したいという気持ちが伝わってくるものだ。


 けれども、それが成功しているか否かはまた別問題で、今回の小変更は、僕の目からは残念ながら空回りな感じに見えるんである。

 たとえば、大きく変わったフロントバンパー周りは、より立派に、かつ踏ん張り感を前面に出したようだけど、これと柔らかなサイド面が完全にミスマッチで、顔だけデカい妙なバランスになってしまった。

 インテリアでは、新色のシート地がイメージの一新を図ろうとしているけれど、室内各部との調和がイマイチ取れず、どうにも浮いた感じになっている。ドアのインナーノブなど、シルバー色素材の追加はいかにも「取って付けた感」が拭えず、やっぱりそれだけが浮いて見える。

 これらは、決して日産のデザイナーのセンスが悪いワケじゃなくて、そもそも新型マーチというクルマが、その程度の化粧直しでイメチェンできるようなポテンシャルを持っていない、ということなんだと思う。

 ピンクの新しいボディカラーも、プラム色のインテリアも、方向性としては先代が試行した上質なデザイン展開に準じているんだけど、ベースのチープさがそうした試みをすべて台無しにしてしまっている。

 もちろん、先代だってお金をかけた作りじゃなかった。けれども、それをカバーする工夫があったし、それこそデザイン力で乗り切ったわけで、その点で現行マーチとは比較にならないんである。


 
 さて一方、シューティングスターという名のデミオの特別仕様車はなかなかいい感じに仕上がった。“スポルト”の方はまあよくあるブラック基調なんだけど、フロントランプやドアミラーにしても、あるいはシートにしても、トータルで統一感がとれている。

 お洒落路線の“グレイス”は、シックな内装の色使いがマツダとしては珍しい提案で、スポルトと違った世界が演出できている。とくに今回の青いセールスカラーのボディ色との組み合わせは、クルマ全体で独特の質感を感じさせる出来だ。


 これはマーチとある意味逆で、マツダのデザイナーがことさらセンスがいい、ということじゃないだろう。それよりも、もともとデミオというクルマが、コンパクトクラスの中でもしっかりとした作りをしていたからで、ベースとしてポテンシャルを持っていた、ということなんだと思う。

 この対比が面白いなと。

 かつては、デザイン性で断然リードしていたマーチが、相応のマイナーチェンジを施しても安物のCDラジカセみたいなのに、少々野暮ったかったデミオが、特別仕様車でもって音のいいコンパクトオーディオ程度のクオリティ感を出している。

 結局、最初からちゃんと作らないとイケナイという単純な話だ。それが戦略であれ何であれ、安物はそれ以外には化けない。さらにお金と手間暇をかけたニスモヴァージョンにしたって、まあそれは同じことだ。

 そうそう、TVで宣伝しているヴィッツのお洒落仕様車シエル、あれも随分残念なことになっているもんなあ。

(13/07/22 すぎもとたかよし)

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