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コラム&レビュー

新車心象風景:ホンダ・N-ONE

 
 頑張ってまとめたなあ、と思う。


 自社の名車をリバイバルするにしても、ホンダ・Zのように相当適当なやり方をすれば自ずと消滅してしまう。今回はその轍を踏まないようにしたのかな、なんて。

 そのZと大きく違うのは、N360のキュートなイメージを再現させるべく、デザインから入ったと自ら公言しているところかと思う。エクステリアにしろインテリアにしろ、まずカタチや色から入った。で、そのまとめ方がなかなか巧かったのが、まずは成功のきっかけかと。

 もちろん、一気加勢のNシリーズとして、本気で軽市場を「取りに来た」タイミングだったのも成功の前提だろう。時間も手間も、もしかして資金もそれなりに使える幸運があったのかもしれない。N BOXが徹底した機能性なら、こっちは徹底した感性勝負というように。

 けれどもだ、先代ムーヴがそうだったように、よくできていればいるほど、軽規格に収まっていることの「足かせ」感が拭えないのは、これまでのここでの話と一緒なんである。

 高速巡航可能なターボをカスタム(プレミアム)だけに限定しなかったのは見識だけど、しかしそのターボが1.3クラスからの「ダウンサイジング」というふれ込みは結構苦しい話だ。より低回転から作動するセッティングはいいとしても、それはいわゆるダウンサイジングとはまったく違う。燃費数値だってNAより低いしね。

 もちろんNAにも特別な魔法が掛かっているわけじゃなくて、N BOXと同じロングホイールベースの安定感は事実としても、やっぱり軽以外の何物でもなんである。


 
 いや、ちょっと悪趣味なプレミアムのインテリアを除けばデザインも作りも文句はないんだから、このまま大きなエンジンを積んだ「リミテッド」シリーズを展開してくれればいいんだと思う。

 ホンダは海外ショーで1リッター・ターボエンジンを展示したけれど、もし直噴化された“本当の”ダウンサイジングエンジンを載せてくれれば、それこそファーストカーになり得る動力性能を持つだろうし、もしかしたら燃費だって軽ターボを凌ぐかもしれないでしょう?

 もちろん、サイドエアバッグの標準化や自動ブレーキシステムなど、上級車としてさらなる装備の充実も並行すればより商品性は上がると。当然価格はそれなりにアップするわけだけど、そもそもそういう高付加価値商品として耐え得る資質をこのN-ONEには持たせたわけだからさ。

 維持費を筆頭に、基本は軽規格を望むユーザーがメインになるんだろうとは思う。それはそれでいいじゃないか。けれども、どうせ輸出ということになれば似たようなことになるんだろうから、国内にも軽規格を越えた展開が欲しいと思う。

 ほら、日産パイクカーの中でいちばんの長生きであるフィガロだって、丁寧な作りはもちろんのこと、1リッター・ターボという「現実的な」心臓を持っていたのが商品性の維持を支えたとも言えるでしょう。そうすれば、20年経っても人気の刑事ドラマで使えたりするわけだし。

 取りあえず軽でナンバーワンを目指すホンダの計画は順調だ。けれども、商品によってはこの規格だけに収めるのはやっぱりどうかと思う。N BOXとN-ONEには明快なコンセプトの違いがあるけれど、そういう高付加価値を持つクルマとしては新たな市場を失うような気がするんである。

 もちろん、これは今後予定されるビート後継車にもきっと同じことが言えるんじゃないかと思うけれど。

(12/11/25 すぎもとたかよし)

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