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1台のクルマにしてはいろいろなことを考えさせてくれるのが、今度の新しい208なんである。
まず、ボディやエンジンのダウンサイジングは、昨今の欧州車の肥大化傾向を考えると賢明な判断だと思う。大きくなった先代207の発売後に、なんと206を一部復活販売するという掟破りに出た、その市場の反応に対応したんじゃないかと。
もちろん、日本の5ナンバーにあたるVWポロの評判や、世界イヤーカーを受賞したUP!など、ライバルのダウンサイジング傾向が後押しになった面も十分想像できるけど。いずれにしても、高効率なパッケージングが欧州車の眼目と思っていた僕ら205な世代には、まあ納得の方向なんである。
そして、内外装の質感の高さでは、またしてもクルマ作りの姿勢の違いを見せつけられた格好だ。とくにクラスレスな作り込みが素晴らしいインテリアは、昨今、ひたすらコスト重視で安物化に邁進する日本のコンパクトカーとはあまりに対照的で、日本って自動車新興国だったっけ?なんて思わせる。
この辺、90年代には一時期追いつき追い越したと思わせただけに、こうした圧倒的な違いは相当残念な感じだ。歴史・文化・環境の違い、なんて話はもはや80年代に語り尽くされた。日本勢は、この2012年になっても「外国車は高価だから」という言い訳に終始するのかな?
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もうひとつ、エクステリアについては、もちろん作りそのものはいいんだけど、スタイリングそれ自体に関してはチョット?なのが208の面白いところだ。ノートのようにボールの軌跡を描いたワケじゃないだろうけど、アクセントとしておかれたボディサイドのキャラクターラインは「あ、いまやプジョーもこういう小細工やるんだ」という意外性を感じさせるんである。
これは、ランプやグリルなどの細部にエッジをきかせる、新しいプジョーデザインの延長上に引かれたラインであることは理解できる。リアランプの凹形と、あたかも対称なイメージになっているのは偶然じゃなさそうだし。それでも、ここまでやってしまうのは「らしくない」と思わせるじゃないか。
プジョー・シトロエン・ルノーと、フランス車を十把一絡げにするつもりはないけれど、ここ数年はどことなくとらえどころがないような気がしていた。「顔」は独自路線であっても、クルマ全体として何をしたいのかがどうもよくわからない感じ。
それがここに来て、それぞれのメーカーが急激に仕切り直しを始めたように思える。効率的な機能を繊細でエレガントなボディで包み込む新しいプジョーの意図も、一連のコンセプトカーで十分理解はできた。最新モードを使っていながら、どこかよき時代のエッセンスを取り込んだ演出だ。パリでお披露目のGTIもその一環かと。
けれども、コンセプトカーに比べてエレガントさがいまひとつ足りなかった508に続き、ちょっと表面に走り過ぎてしまった208と、どうもあともう一歩なところが惜しいんである。
(12/10/02 すぎもとたかよし)
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