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コラム&レビュー

新車心象風景:日産・ノート

 
 新しいノートについて思うのは、とにかく「安普請問題」なんである。


 まず、スタイルが安っぽい。

 大きく湾曲したリアランプから伸びる自慢の「スカッシュライン」は、何となく好評ジュークの延長上でトライしているように見えるけれど、結果としてそれは成功していると思えない。

 だって、ジュークの場合、クーペとSUVを無理矢理上下に合体させるという「芸当」の中に、リアランプをはじめとした特徴的なラインが生まれることになったけれど、ノートの場合は、実に単調なボディに線を「描いた」だけだ。たしかに、リアランプ付近こそ多少彫りが深いけれど、ボディの構成自体に直接関係しているとは言い難いんである。

 こういう場合、マツダのプレマシーがそうだったように、カタログ写真では完璧な陰影の演出ができても、実車をみるとほんとんどその効果がわからない。光線によってはクルマの前に立っても気付かず、顔を近づけ、手で触れて「ああ、なるほどね」って感じだ。

 まあ、こういのは日本車だけじゃなく、たとえば新しいプジョーなんかでも見られるけれど、仮にスカッシュ・ボールの軌跡をどうしても表現したいというのなら、やっぱりそれをボディ全体のテーマにしなくちゃいけない。イヤイヤ、そんな複雑なことはできないヨというのなら、当然最初からやらない方がいいでしょ。

 それと、フロントグリル。槍型のヘッドランプと一体にする案はいいとしても、樹脂のグリルはテスト用の試作車かと思うくらい安っぽい。これもカタログ写真と実車で大きく違ってくるところだと思う。

 そして、インテリアが安っぽい。

 ほぼマーチのレイアウトを踏襲しているインパネの安普請ぶりは、生産が国内外という問題じゃなく、要は作り込みの“見切り”だということを見事に証明している。


 
 自慢はピアノブラックの操作パネルだというけれど、なるほど、それ以外の大半のスペースを占める一体成型の樹脂部分は安いラジカセレベルの酷さなんである。しかも、上級グレード以外はそのピアノブラックもなくなるから、もう救いようがない。

 この度、国内ではせっかく築き上げたティーダ・ブランドをあっさり統合するにあたって、日産はわざわざメダリストなんて懐かしいグレードを復活させた。発売前はそういうやり方もありかなあ・・・なんて思っていたけれど、そのメダリストですらボディカラー以外の作りは同じというからいただけない。

 唯一、シートが合皮なのは特別だけど、内装色が全車同じブラックということもあって、特別感はほとんどない。もはや、明るく丁寧な作り込みを持ったあのティーダの世界は微塵も残っていない。自らラグジュアリーを謳った商品の顧客をこんなんで引き込むっていうのは、相当な厚顔無恥ぶりじゃないか。

 一体いつからなのか、何で過去のモデルより平気で質感を落とすようなことになっちゃったんだろう? しかも、その劣化具合が半端じゃない。いや、これはもちろんノートやマーチだけじゃなくて、トヨタもパッソやヴィッツ、ポルテなんかがそうだ。何かこう、このクラスはこんなもんだと開き直っているようにすら思える。

 本来のティーダは、3ナンバーになって欧米を中心に展開されるらしい。そういう市場や商品展開上の戦略、コスト管理、利益率の確保なんて理由が背景にあるにせよ、それはマツダやスバルだって基本的には同じ筈だし、外国車メーカーだってそうだろう。

 新興国向け商品をパッと持ってきて超廉価車として売ろう、なんて話ならともかく、継続生産するブランドでこれをやっちゃうのは、本当に残念な話だ。九州ドライブのときにも書いたけれど、最新の技術を用意しながら、それを載せる器がこの安普請っていうアンバランスさは、本当にどうにかならないのだろうか?

 実際、スーパーチャージャー付き小排気量直噴エンジンは僕も相当興味があるけれど、それがノートやマーチっていうんじゃあ、これっぽちも欲しいとは思わないものね。

(12/09/14 すぎもとたかよし)

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