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コラム&レビュー

新車心象風景:メルセデスベンツ・Bクラス

 
 何かこう、いかに自分は勝手な思い込みをしていたかということを、改めて認識させられるんである。

 たとえば、欧州車に比較的トンチンカンなクルマが少ないのは、各メーカーの歴史はもとより、それなりにたっぷっりとした時間をかけて開発することで、妙な部分は淘汰されるのではないか、というのもそのひとつかもしれない。

 サンドイッチ構造を捨てることでレイアウト上の制約が減ったAクラスは、BMWの1シリーズとガッツリ張り合うかのように、低くスポーティなハッチバックスタイルに舵を切った。


 同様に制約の減ったBクラスも似たような方向を向いたわけだけど、Aクラスの兄貴分としてひと回り大きいボディは、いまいちスポーティな雰囲気が足りない。じゃあ、そのボリューム感のあるボディをどうシャープに見せようかと考えたのが、たぶんサイドを走り回るキャラクターラインなのかと思う。

 ホンダ・フリードの悪夢を連想させるアンダーラインは、仮にルーフラインと相対する軌跡を描いているとしても、やっぱり思いつき感は拭えない。これだけでも十分残念な感じだけど、さらにAピラーから斜め下に向かうもう1本のラインがトドメを刺す。

 いわゆるイメージスケッチの段階はともかく、生産型へと作業を進めてゆく過程で、こうした妙な発想は整理されるんだろうな、と思っていたんである。そうやって、一発芸的な過ちは見事に回避されるんだろうと。


 
 たしかに、05年あたりからメルセデスデザインは迷走を始めたなあとは思ってはいた。彫りの深い唐突なサイドラインばかりに頼って、ボディ全体でやりたいことが見えにくくなっているような。けれども、現行の「E」や「C」で、ようやくほどよい着地点を見つけたものと思っていたんである。そのキャラクターラインの使い方を含めて。

 いや、最近の欧州実用車はアウディなど一部を除いてどうもピンと来ないというのはあった。ルノーはどれもボヤンとしてとらえどころがないし、大当たりした500の弊害か、フィアットは新しいパンダをはじめどれもこれも締まりがなく、ブラーヴォまでもが500化するって話だし。

 ただ、これらのメーカーのクルマが、クオリティの高低はともかく、一定のまとまり感を持っているのに対し、メルセデス・ベンツの場合はそこが相当に弱い。このBクラスに至っては破綻すらしている。ボディサイドの暴れ具合とリアの退屈さの対比などは、ちょっとスゴいものがある。

 1.6リッターターボへダウンサイジングし、リッター20キロを越えた燃費性能などは実に現代的で、ちょっと前までの欧州車では考えられないものだ。

 それはまるで日本車のような性能向上ぶりだけど、だからといって短絡的で未消化なスタイリングまで日本車を見習わなくてもいいのにと思う。まあ、ミニミニバンな日本車的パッケージングはいいとしても。

(12/05/19 すぎもとたかよし)

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