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前回の続きになってしまうけれど、今度はレクサスの話。
よほどのクルマ好き以外にその意図が伝わるか否かはともかく、GS同様、TVCFの冒頭にスポットが当たるのが例のスピンドル・グリルだ。
この紡錘形のグリルがいいとか悪いとかについては、当然いろいろな意見があるかと思うけれど、たぶん問題はそういうことじゃない。
たしかにクルマにとってフロントグリルは重要な部分ではあるけれど、それでもクルマの一部分に過ぎないことも事実なんである。それをことさら取り上げて騒ぐのはあまりに滑稽ってもんじゃないか。
そんなことはない、アウディだってシングルフレームを大々的に打ち出したじゃないか、なんて意見もありそうだけど、あっちとは状況が違う。
アウディの場合、それまで時間をかけて育ててきたグリルの、ひとつの到達点としての造形があれだったんである。シンプルな逆台形から上下分割での表現、そしてその両者の融合としてのシングルという。
いや、唐突ということでは、たとえばインフィニティの凹形グリルも実は同じだったりする。ただ、あの掟破りなカタチの是非はともかく、レクサスと違うのは、そればかりを前面に出すようなことをしていない点だ。
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いまさら言うことでもないけれど、クルマのデザインはあくまでもクルマ全体で表現するものであって、だからこそプロポーションの重要性が説かれたりもするんである。
ところが、前回にも書いたように、近年のトヨタは数理面だの精鋭だのと細部ばかりに興味を示し、ユーザーにその理解を強いるようなことをやって失敗を招いてしまった。本来は、RXというクルマ全体で何をどう示すか、なんだけど。
もちろん、マイナーチェンジのRXはもとより、オールニューにもかかわらずグリルばかりをウリにする、いや、しなくてはいけないGSも含めれば、実は結構深刻な状況だと僕は思う。
ちなみに、そのスピンドル・グリル自体の感想だけど、これも前から書いているとおりどうもしっくり来ない。逆台形の一般的なグリルに、流行のハの字形バンパーが組み合わさっただけのそれに特段新しさは感じないし、これがフロントフェイスにべったり張り付く様に美しさも感じない。
RXについて言えば、もともと感じていた前後のいまひとつな不安定さを、取って付けたスピンドルが後押ししているとしか思えなかったりする。
かつて、独自性と均整感を両立していた初代ハリアーを思い出すと、この15年は一体何だったんだろうと思う。もちろん、ハイブリッドを含めたハードの進化は少なくなかったんだろうけど、じゃあ日本車っていうのはいまだにそういうことだけなのか?
隅々まで目を配り、美しさと繊細さにあふれる新しいTVCFは、まさに映像版のL-フィネスと言えるだろう出来映えなんだけれど。
(12/04/24 すぎもとたかよし)
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