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コラム&レビュー

新車心象風景:マツダ・CX-5

 
 スカイアクティブってなんだろう? CX-5はそういうシンプルな疑問を感じさせるんである。


 個人的に「塊動」のエッセンスをそれほど感じないボディスタイルは、新しいモチーフを取り込んだフロントフェイスをはじめ、それでもライバルに比べれば相当アグレッシブだ。

 デミオやアクセラ同様、これならマツダブランドが浸透している欧州市場でも埋没しないだろうと思えるCX-5のウリは、しかし「フル・スカイアクティブ」初搭載ということになっている。

 エンジンやミッションに止まらず、シャシー設計まで含めるというその技術思想は、メカ音痴の僕でさえ、理屈としてなら一応は理解できるものだ。

 けれども、じゃあ製品、いや商品としてCX-5を見たときに、先のアグレッシブなボディ以外でユーザーへ的確に届くのは、少なくとも僕の感覚では、複雑な後処理装置を持たず、ガソリン車と大きな価格差を持たないクリーンディーゼルそれ自体の魅力だ。

 実際、目標の3倍近くという受注は、広島市のクリーンディーゼル補助金制度なんて分かりやすい支援もあってか、8割近くがディーゼルという、ちょっと信じ難い状況になっているみたいだし。もちろん、そもそもコンパクトSUVが好調の欧州でも、この画期的エンジンがヒット作の理由になることはほとんど間違いないとも思える。


 
 そもそも、デミオは“フル”じゃなかったけれど、リッター30キロといういまどきな燃費性能で売れたわけで、これも要は同じ話なんである。

 さらに、次期アテンザが待望されているのは、同じクリーンディーゼル搭載の可能性もさることながら、「塊動」を大きく反映したスタイリッシュなボディがその大きな理由であって、回生装置を搭載した第2ステップのスカイアクティブだから、とは思えなかったりする。

 そうであるなら、スカイアクティブというのは、ユーザーにとっては“燃費のいいエンジン”とほとんど同義となっているんじゃないかと。動的要素も盛り込んだシャシーや、ロックアップ機能を強化したミッションは取りあえず横に置いといて。

 いや、それがいけないとかおかしいとか、そうは思わない。わかりやすい部分だけでも理解されるのなら、それはそれでいいんじゃないかと思う。

 思い返せば、マツダというメーカーは結構な頻度で“刷新”をブチ上げてきた。ファミリアの頃の「剛性」や、ユーノスの「ときめき」など、ボディ設計や塗装技術、デザイン改革など、現在進行形の「ズーム・ズーム」に限らずに。

 効率追求のエンジンにしたって、ミラーサイクルやプレッシャーウェーブディーゼルなんて提案もあった。問題というか課題は、そういう刷新宣言がどうも継続しないことと、すべてがユーザーへ真っ直ぐ届かないことかもしれない。

 そういうわけで“フル”になったCX-5は、ユーザーにとってスカイアクティブとは?ということを、改めて考えさせてくれる貴重なクルマなんである。

(12/04/05 すぎもとたかよし)

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