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昨年度に再開された「間違いだらけのクルマ選び」が、同じく島下氏との共著というかたちで発刊された。
前回同様、ほとんどの内容には賛同なんだけど、ちょっとだけ違和感が残るところもあったんである。
それは、ようやく日本車復活の兆しが見え始めたゾという話で、マツダのスカイアクティブやミライースなどの低燃費技術、86やLFAといったスポーツカーの登場、そしてEVによるスマートグリッド展開、といった話だ。
低燃費技術について、本書では欧州で進むダウンサイジングに並ぶものとして書かれているのだけど、NAエンジンにアイドリングストップ、燃料タンクの小型化など一部の機能を省いてまでの軽量化、高圧の低燃費タイヤを組み合わせたそれは、いわゆるダウンサイジングと比べられるものじゃないと僕は思う。
たとえばポロのTSIは、小排気量による燃費の向上と同時に、反面低下してしまう出力をターボで賄っている。しかもそのトルクバンドが広いので、3,4名乗車や長い登り坂、高速巡航など、日常での守備範囲もまたとても広い。
スカイアクティブはクルマ作り全体ということだし、エンジンの高効率化自体は、たとえばその後のHV化などを考えれば歓迎すべき技術だけど、少なくとも現状では「何がなんでもリッター30キロ」という燃費至上主義で、本当の使い勝手や安全性がどうも後回しになっているんじゃないかと。
これは、間もなく復活するミラージュも同様だし、スーパーチャージャーでダウンサイジングに同調しようというマーチについては、そもそもクルマ自体が安普請という残念さだ。
そしてEVの話。一家に一台が基本の日本のクルマ環境にEVはまだそぐわないというのは、これまでここで書いてきたとおりだ。じゃあ、災害時や再生エネルギーを想定したスマートグリットならいいのかというと、やっぱりどうもピンと来ない。
ブログがすでに古いメディアに思えたり、スマホやタブレットは当たり前というような新しモノ好きの日本人だけど、今回の東京モーターショーも含めて、スマートグリットもまたそんな勢いだ。
たしかに、東北の震災では一部のEVが大容量バッテリーの役割を果たした場面があったと聞くし、自家発電とEVを循環させるという発想は面白いとは思う。
けれども、だからEVで先行する日本のクルマ事情が明るいっていうのは、何か違うんじゃないか?
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それは、先のようにEVそのものがまだ実用に適していないという面もあるし、災害時の想定なんかについては、それこそ全戸で購入可能な「家電」として大型バッテリーを開発・販売した方がよっぽど普及するんじゃないかと。もちろん、それに加えてたまたまEVもあった、という話はアリなんだとは思うけれど。
EVは、超小型車としてシティコミューターや高齢者用の車両などに大きな可能性があるとは思う。個人的には現行軽自動車規格の見直しと絡め、現在各自治体で行われているような実証実験は大いに支持したい。
ただ、それは元気のない日本車が復活する予兆とは、また別の話だと思うんである。
じゃあ、どうすりゃ日本車が元気になるんだっていうのは、何をもって「元気」とするのかによるので結構難しい。そもそも、年間400万台も売れているんだから、考えようによってはいまでもしっかり「元気」と言ってもいいわけでしょ。
しかも、そのうち輸入車はわずか数%のシェアと相変わらず国産車天国だし、VWのUP!みたいなクルマが世界を席巻しようとする時期に、旧態依然の軽自動車にすがりついてガンガン売っているのであれば、まあそれはそれでいいんじゃない?とも。
いや、一部のHVや軽、ミニバンばかり売れる日本は偏っていてやっぱり元気がない、というのであれば、これはもう端的に言って「ちゃんとした」商品をしっかり作ることしかないと思う。
先のスカイアクティブはひとつのいい例で、いまは「HVじゃないのにリッター30キロ」みたいな話を前面に出してしまっているけど、全車のクルマ作りを基本から一新するというのであれば、これは遠回りのようで、実は元気回復への近道じゃないのかと。
たとえば、セダンが北米で、コンパクトが欧州で絶好調の現代・起亜グループを見ればわかるけれど、特段最新技術だけをウリにするのではなく、的確な市場調査、しっかりとした品質管理、先進的なスタイリング、無駄のないラインナップ、巧妙な販売戦略とサービスと、ごく当たり前のことを行っているだけとも言える。
そうして海外市場では着実に日本車を凌駕しつつあるわけで、それを危機とするなら、日本の高い技術力を使って愚直に「いいクルマ」を作るしかないでしょう。
そんなことを考えていると、本書の“日本車復活の予感”にはどうしても違和感を持ってしまうんである。
あ、そうそう。もうひとつのスポーツカーの登場については、86の話を前回にしたのでここでは割愛します。
(12/02/16 すぎもとたかよし)
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