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コラム&レビュー

新車心象風景:スズキ・スイフトスポーツ

 
 スイフト・スポーツは各方面の評価同様、僕もいいなと思う。


 ただそれは、単にクルマ好きのツボをおさえたホットハッチだから、というわけじゃなくて。

 ご存じのとおり、自動車メディアではスイフト=スポーツというほとんどお約束状態で、ようやく真打ちの出番という扱いになっている。立場も車格も違うけれど、それは件のハチロクとそっくりで、実際「これはFFのハチロクだ!」と書いている雑誌まであったりする。

 けれども、そうじゃなくて、そもそもそういう特別なクルマを育て上げたこと自体を評価したいと思うんである。

 コンパクトカー仲間でも、ノーマルに対するスポーティヴァージョンであれば、ヴィッツやデミオ、フィットにだって設定されているけれど、それら各車とスイフト・スポーツとの違いがミソ、とでも言えばいいのかな。

 たとえば、スイフトと違いヴィッツやフィットはエンジンが基本的にノーマルと同じだ。それは結構な印象の違いとなるけれど、じゃあ、だからヴィッツやフィットはダメなんだっていう話じゃない。

 なんだけど、じゃあ最終的にどういうクルマにまとめ上げるのかという「商品企画」は、それこそエンジンをはじめとしたハードの開発から、もちろん販売方法まで諸々の検討事項をどう判断して行くかの積み重ねなんだと思う。


 
 しかも、その積み重ねを成功させるには明快な方向性が必須で、そこがブレると商品自体の存在感が薄くなってしまう。エンジンが1.6だとか、ダンパーがテネコ社製だとか、そういう各々の特別装備や意匠の違いは、あくまでもそういう明快なコンセプトの結果ということだ。

 スイフト・スポーツは、それこそ初代の存在感は薄かったけれど、先代からシリーズ中でも特殊なモデルであるということを明確に企画・開発し、広報・販売してきた。実質一代でその特別感を持たせたことは、その進め方が的確だったことを証明しているんだと思う。

 まあ、分かりやすく考えて、欧州のモーターショーに「スポーツコンセプト」として単体出品し、何の違和感もないばかりか、そのデビューを心待ちにさせるという事実がそれだ。

 これだってヴィッツにもフィットにも資格はあるわけだけど、実際にはそんなことになっていない。ところが、“一応”な感じで「RS」なんてグレードはあったりする。この中途半端さとの違いなんである。

 残念ながらSX4は日本市場に根付かなかったけれど、非常に数少ない小型車ラインナップの中で、こうした商品を実現することはやっぱり評価されるべきだと思う。これでサイドエアバッグなんかが標準装備されていれば完璧なのにね。

 ちなみに、僕はNAエンジンのスポーツもいいと思うけれど、ベースの1.2リッターに加給器を付けたようなモデルもあればいいと思う。もちろん、ポロのようにそうしたエンジンがベースモデルであればなおいい。

 一家に一台という日本の標準的な環境を考えれば、より高いトルク特性や燃費効率のいいエンジンの方が、日常の使い勝手にも高速走行にも向いていると思うので。

(12/01/13 すぎもとたかよし)

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