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仮に、それほど読者の意識が高くないことを織り込み済みだとしても、どこまで安易な企画を作るかっていうのは考えどころかもしれない。
いま売りd誌の「祝・FT-86市販型登場! 次世代Fun to Driveを問う」。トヨタの回顧調TVCMをそのまま持ってきて、話題のハチロクを紹介する巻頭特集だ。B5判グループだけじゃなく、A4当誌もそんなにハチロクが好きだったのね。
で、そういう安易な企画自体はもちろんOUTなんだけど、じゃあせめて中身は面白いのかと期待すると、それも何だかよく分からないところが今回の肝だ。
たとえば、常連のF氏によるFR代表のBMW1シリーズと、FFベースのレクサスCT200hのインプレッションは、相変わらずの過剰な形容と不必要に堅苦しい文章で、何がいいたいのかがまずさっぱり分からない。
しかも、特集テーマと一体どう結びつくのかと思いきや、これまたいまどき「やっぱり走りはFR」などと強引極まりない結論で、そこで“FT-86に期待!”というのがオチらしい。
いやいや、CTってハチロクと同じトヨタなんだけど、なんて疑問や、他に「Fun to Drive」として引っ張り出されているCR-ZもヴィッツG'sもやっぱりFFと、一体何を書きたいのか最後まで分からなかったりする。
ま、自動車総合誌の多くがそうであるように、話題の新型車に合わせて特集内容を決めること自体はとくに珍しくない。BMWの3シリーズやポルシェ911の新型が発表されれば「ドイツ車のいま」みたいに。
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だから、市販型が決まったハチロクに胸躍らせて「Fun to Drive」を特集するのはいいとしても、しかしそれはそれでちゃんと「Fun to Drive」の何たるかを検証しないとまともな記事にはならないでしょ。
いや、このd誌、少し前に「そんなにいいのか輸入車、そんなによくないのか国産車」というとても面白そうな特集があったんだけど、結局比較させる内外2台のインプレッションが淡々と載っているだけで、肝心の結論はどこにも見当たらなかったなんて例もある。
それは冒頭のように、そもそも読者がそこまでの意識を持っていないという前提が編集部にあるのかもしれない。それらしい特集見出しに、それっぽいインプレッションが載っていれば誰も疑問は持たないだろうと。
けれども、そういう次元での積み重ねは、きっといまの地上波TVがそうであるように、何ていうか、雑誌メディア全体の底辺をどんどん下げて行く感じだ。それこそ週刊誌が「テレビは死んだ」と書いているとおり、自動車雑誌もその後をしっかり追っているんじゃ?
分かっているけどこれでいいと確信しているのか、もしかしてこれが編集の限界なのか。一方、読者はこれで十分納得する内容だと思っているのか、そもそもホントに何も考えてないのか、一体どうなっているんだろう。
あ、ちなみに僕が思う「次世代Fun to Drive」とは、もはやクルマ単体で語るべきものじゃないと思う。たとえば道路インフラや交通行政、あるいはある種の運転マナーだって外せない要素かなと。
(11/11/24 すぎもとたかよし)
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