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コラム&レビュー
■新車心象風景:トヨタ・クラウン
■トヨタ クラウン■
 (2003年12月23日発売)

◆主要諸元(ロイヤルサルーンG)
 最大出力:256PS/6200rpm 32.0kgm/3600rpm
 外寸(o):全長×全幅×全高=4840×1780×1470
 東京地区標準価格:470万円

 ZERO CROWN。
 もはや国産車の「上がり」じゃなくて、単にスタートなんだよというイメージを伝えるには、なかなかいいコピーだと思う。ユーザーの平均年齢が60歳に届かんとするいま、気の利いたフォントの英文字によるこのキャッチコピーで、狙いを定めた40代が本当にこっちを向いてくれるかもしれない。まあ、そうやってユーザーが動くこと、あるいは動かされることについては何の異存もないけれど、プロの評論家やメディアまでもがワアワア騒ぐのはどうなんだろう?

内弁慶?
 プラットホームを一新した、フロントオーバーハングが短くなった、ついにV6が採用された。そしてスタイルはアグレッシブになった。
 とにかくあれこれ美辞麗句が使われたインプレッションが花盛り状態なんだけど、今回最も使われていて、しかし僕が一番イヤなのは、「もはや世界基準だ」という言い回しだ。
 クラウンが世界基準? 一体何よそれ。
 まずもって、このZERO CROWNにしても結局国内専用のドメスティックカーに変わりはないのに、そこで世界がどうのこうのってサッパリ意味が分からない。たとえば有能なスポーツ選手が、これはもう世界基準だなんて言われたところで、実際に外国のチームなり選手と競わなくっちゃあ「世界クラス」なんて言葉に何の意味があるよいうのか? イチローが世界的プレイヤーと称されるのは、日本と同じ優れた成績を外国でも残している実績があるからでしょう?

何が世界基準?
 そしてもうひとつ。
 今回こうして走りがどうのスタイルがどうの騒がれているけれど、じゃあ、このクラウンの世界基準っていうのは、トヨタにとって何らかの技術的ブレイクスルーでもあったのかと問いたいんである。でも、それはないでしょう?
 トヨタの世界基準といえば、その実績からして間違いなくセルシオなんじゃないの? 80年代の終わりに「源流対策」という明快な目標でもって作られたセルシオは、3代目のいまでも世界の高級車と対等か、ある意味それ以上の基準を保っているでしょう。少なくとも北米では大成功を収めているし、かのメルセデスを脅かしているのも事実みたいだし。
 つまり、トヨタはもうとっくに世界基準の仕事が出来ているし、実際世界第2位の生産台数を誇るメーカーなんである。そんな中、歴代のクラウンは国内専用という偏った環境に甘んじて来たわけで、今回はそれがセルシオの足元くらいまで近づくように作ってみましたよ、という話なんじゃないの? それは、たとえばメルセデスだったらAからS、BMWなら3から7シリーズという一貫したクルマ作りが、とんでもなく別次元のクルマを突如作ってしまった、というような話とは本質的に違うレベルでしょう。要するに、これまで意図的に80点に止めていたのを、今回は90点にしてみましたという、単にそれだけの話なんじゃないのか?
 そうだとしたら、何でそんなつまらないことに対してメディアはこれ程の大騒ぎをするんだろう。メーカーが自分の都合で勝手に国内専用にして、今度も勝手にそれを止めただけだというのに。

 醜悪な和洋折衷の豪華絢爛な内外装、スタビリティよりフワフワを選んだ足周り、極めて非合理的なパッケージング。クラウンは日本専用なんだからこれでいいのだ、いや、これこそ日本文化を反映したクルマなんだ、日本文化そのものなんだ。なんてことをエラそうに打った文化人が随分といたような気がするけれど、結局それを捨ててしまうなら、そこを問わなくちゃあ、クラウンのインプレッションにはならない筈。しかも、遅れて登場するマジェスタは販売店の関係上、ほとんどセルシオと中身が一緒だというから、じゃあそれこそクラウンって一体何なのか? という問題を語らずして何が自動車評論家か?


(04/03/09 すぎもとたかよし)

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