|
あるサイトのアンケート報告で、最近のクルマの購入傾向として「3低」傾向にあることが指摘されていた。即ち「低価格」「低燃費」「低維持費」なんだそうで。
牛丼1杯250円のデフレ?時代に、クルマだってお安くといのは自然な流れだ。だた、一体いくらなら「低価格」なのかはユーザーのお財布状態によって違ってくるから、まあ安易な線引きはできないんである。
僕なんかはコンパクトカーの100万円台前半がパッと頭に浮かぶけれど、絶好調のプリウスは200万円オーバーだし。もちろん、この場合は「低燃費」が絡んでくるからやっぱり「3低」なのかもしれないけど。
その「低燃費」は数年前のガソリン高騰あたりからユーザーの意識を変えてきたようだけど、ちょうどその頃から新車の燃費性能が急激に上がってきたこともあるかと。ちょっと前まで、カローラクラスでさえATなら平気でリッター10キロを切っていたような状況が、ふつうに13,14キロ走ってくれるような変化。そしてハイブリッドがこれを後押しした。
「低維持費」はふつうに考えれば軽自動車なんだろうけど、これもダウンサイジングを考えればもう少し幅があるかもしれない。そもそも、故障の少ない日本車自体が以前から低維持費車とも言えるだろうし。
じゃあ「3低」はまったく報告のとおりじゃないか、となるところだけど、どうも記事の行間からは、同時に「低品質」というオマケが読み取れるのが気になるんである。
目に見えるコストダウンといえばタイ製のマーチが話題の筆頭だけど、国内製だってヴィッツやパッソ・ブーンなんかも結構すごいことになっている。
それに、ある雑誌では新興国で生産されるコンパクトカー、たとえばトヨタのエティオスなんかは日本でも売るべきだと訴える評論家もいるから、そうなればこの方向はさらに加速する。
|
|
80年代、北米を中心に反感を買った日本車の特徴は「個性はないけど安くて壊れない」だった。じゃあ、低品質だったかといえばそれは違うと思う。もちろん、20〜30年前なりのチープさはあっても、ことさら安物を目指していたわけじゃないと。さらに、北米ユーザーが当時日本車を選んだのは、小型軽量故の燃費のよさがあった。
つまり、もうずいぶん前から日本車は低価格・低燃費・低維持費の三拍子が揃っていたし、可能な範囲での品質管理もできていたんである。だから、それから四半世紀を経た現在は、日進月歩の技術向上によって、それはそれは素晴らしい「3低」車が溢れている筈、だった。
なんだけれど、現実は少々違って、単に安易なコストダウン方面へ傾いてしまったみたいだ。もちろん、スイフトやデミオのような良品もあるけれど、当時の勢いで四半世紀をかけた「成長」はほとんど見られず、軽にしてもわずかな規格変更に縛られて歩みが加速しない。
メーカーがそういうことをやれば、ユーザーは「クルマなんか動けば何でもいいや」となるだろうし、「とにかくお金のかからないやつ」にもなる。じゃあもっと安いクルマをとメーカーが考えれば、もう完全に悪循環だ。そりゃあ、クルマ離れだって起こるわな。
「3低」は日本車の武器ですらあると思うけれど、僕が考えていた2011年の「3低」はいまみたいなクルマじゃない。それは一体何が原因なんだろう?
メーカーの怠慢か、動かし難い市場原理か。それとも御用評論家を含めたメディアなのか、あるいはもしかして僕らユーザー自身にあるんだろうか?
(11/08/23 すぎもとたかよし)
「日本の自動車評論を斬る! すぎもとたかよしのブログ」へ
|