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日本の自動車評論を斬る、なんていう割に、最近そういう記事をあんまり書いていない。正直、このところ自動車雑誌を幅広く読んでいなかったんである。こりゃ怠慢だ。
ということで、久々に何誌か買い込んでみたところ、B5判のH誌が結構すごい感じだったので、チョットふたつばかり取り上げてみようかな、と。
まず、何といっても評論家O氏の日産ラフェスタ・ハイウェイスターのインプレッションだろう。
冒頭からTVCFで使われる「イケダン」なんてワケの分からないキーワードを持ち出すのも驚きだけど、事情を知らない人が見たら日産ハイウェイスターに見える点はポイントが高い、という評価もかなりのもんだ。
そして、そこから延々続くインテリアや足回り、エンジン、アイドリング・ストップの解説はマツダ車のそれだから、根本的に意味がない。
そうして迎えた結びは、何と「イケダンを目指すなら、ハイウェイスターのようなクルマで、“できる男”を演じたいところだ」と来た。
端的に言って、いちばん安易で恥ずかしく、そして中身がない書き方なんだけど、まあ若手とはいえ、それなりの年齢を迎えた大人が本気でこんなものを書くとは思えないから、これは頭が悪いとかじゃなく、やっぱり「無責任」な仕事と言うべきなんだろう。
もうひとつは、このO氏ほどじゃないけど?な内容の、女性評論家T氏によるダイハツe:Sプロトタイプ試乗記。
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僕はこのe:Sテクノロジーを否定しないし、現行規格でできることにチャレンジし、それを市販車に落とし込むのは評価するべきことだとさえ思う。
ただ、じゃあ軽自動車のあるべき姿がこれかといえばそうは思わない。軽量化、高効率化は必要なこととはいえ、それ以前に排気量やそれによる出力・トルク制限から見直さないと、本当に新しい時代の軽自動車なんて見えてこない、というのは最近の自分の記事のとおりだ。
この2氏の記事については、メーカーが言ってること、提案していることを「そのまんま」文字にするだけという点でまったく一緒だ。たとえばOEMって何だとか、ホントに軽規格はこれでいいのかとか、本来評論家として考えるようなことは何ひとつ書かれてないんである。
うーん、これじゃあ僕が本を書こうと思った20年前から何も変わっちゃいない。いや、このふたりが僕よりずっと年下だということを考えれば、むしろ後退じゃないか。
日本での自動車評論を形にした小林彰太郎氏が自叙伝を書き、ベストセラーで広くユーザーを啓蒙した巨匠はいま一度警鐘を鳴らしている。両者が自らの晩年の仕事としてそういう「まとめ」をするに至るまでの、この長いながい数十年間は一体なんだったんだろう? 後を追うべき若手のこの体たらくを見ると、そんなことまで考えてしまう。
もちろん、TVニュースが政府やスポンサー企業の「広報」に成り下がり、作りがワイドショーレベルに劣化しても、それをニュースとして疑問を持たず観ている人が大半なように、こんな記事でも「フムフム」と納得している読者、ユーザーがほとんどなんだろうけれど。
(11/08/14 すぎもとたかよし)
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