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カスタムのお下品話はライフで書いたけれど、今回はもうひとつべつの問題について。
初代がイデア、2代目がイタルデザインとイタリアンルック邁進のムーヴだけど、妙にスタイリッシュだった4代目、つまり先代も実はあちら方面だとダイハツ関係者から聞いたことがある。某雑誌でもジウジアーロ氏(息子さんの方ね)が、ダイハツとの関係を語っていたので、もしかしたら、かもしれない。
で、5代目もその先代を引き継いだスタイリングだ。ボディサイドのキャラクターラインが大きく変わったけれど、クリーンな面のワンモーションフォルムはそのままで、僕はなかなかいいと思っている。
ところが、この流麗な標準車にはなぜかターボの設定がない。だから、たとえば僕がセカンドカーにムーヴを買おうか、でも高速も結構走るかもしれないからターボにしようかと思ったら、大口を開けた強面のカスタムにするしかないんである。
まあ仕方がない、じゃあカスタムのターボでいいやと思うと、今度は暑苦しい真っ黒のインテリアしか用意されていない。標準車の、アイボリーを使った明るく開放的な内装は選べないんである。
一方、そのノーマルには、なぜかディズニーのオプションアイテムがふんだんに用意されていたりする。シートカバー、フロアマット、ナンバーフレーム、ホイールキャップ等々、すごいことになっている。
そう、この手のお約束、あるいはステレオタイプな商品企画、もういい加減何とかならないのかって話なんである。
たとえば、どうしてカラフルさやポップさを売りにしているラパンや先代マーチですら、ターボやSRを選んだ途端内装を真っ黒にしちゃうのか。トヨタのG'sシリーズには、なぜ恥ずかしい赤いラインが入っちゃうのか。
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いや、内外装だけでも?なのに、標準車は上級グレードでもタコメーターやスタビライザーが付かないとか、機能までお約束のステレオタイプな設定はチョットやり過ぎでしょう。これは、新しいヴィッツの女子向けヴァージョンなんかもそうだよね。
似たようなことは以前にも書いたけど、これって日本車の多くでみられるお約束ごとだ。もちろん、車種やグレードによって性格付けを行うのは当然だとしても、その発想があまりにも子供っぽく、横並びに過ぎるのがイケナイ。
先日、アバルト東京の営業マンになぜプント・アバルトは左ハンドルしか入って来ないのか? と聞いたところ、「やっぱり、こういうクルマが好きなお客様は左を希望されるんですよねぇ」とのこと。こうした輸入車あたりまで広げるとなかなか話が戻って来れなくなってしまうんだけど、要はクルマに関わるこの手のステレオタイプは、売り手、ユーザーとも、結構幅広くて根強い感じなんである。
まあ、大げさに言えば一種の刷り込みで、補助金など、意味のない「エコ」が瞬く間に根付いてしまったように、僕ら日本の消費者は“定形化”にメッチャ弱いし、その「エコ」がいい例だけど、いち方向の報道にはほとんど無力だ。そして、メーカーはそこを突いて安易な商品企画に走る。
好評のVWポロがすごいなあと思えるのは、男の子向けはターボ・ESC付き、女の子向けはターボ・タコメーターなしだけどUVカットガラス付き、みたいに妙な仕様差を設けなくて、1台のクルマとして必要なモノはしっかり装備し、それで「普通に」完成度を追求しているからだ。ま、内装は黒しか入って来てないんだけど。
で、この辺で話は戻るんだけど、新しいライフみたいに、見かけからして玉砕しているんだったら、まだあきらめもつくんだとは思う。けれども、このムーヴのようにまとまりのいいスタイルにしておきながら、こういうつまらない“制約”をなぜ自ら施すのか、とても残念な感じだ。
たしかにマーケティングに則っているのは分かるけれど、商品企画として、もっとユーザーを引っ張って行くような姿勢が欲しいと僕は思う。
(11/01/10 すぎもとたかよし)
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