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コラム&レビュー

新車心象風景:トヨタ・ヴィッツ

 
 皆さま、明けましておめでとうございます。昨年同様、今年もよろしくお付き合いのほど、お願い申しあげます。

 で、新年は新車の話から。


 うーん、っていうモデルチェンジを連発とは、トヨタもある意味徹底してるなあ、と。

 アイドリング・ストップ自体は先代から受け継いだけれど、モデルチェンジにはそういう新技術が必ず投入されないといけない、とは言わない。ハイブリッド筆頭メーカーだからって、ヴィッツに必須だとも思わない。

 けれども、5年なり6年なりを経てフルモデルチェンジをするんだったら、それ相応のしっかりした目的は欲しいと思う。

 全長やホイールベースを延ばして居住空間の改善を図ったりしているけれど、トヨタがより訴えたいのは男性客の獲得だそうで。この前書いたばかりのライフが「カッコつけました」というコピーだったけど、こっちは「カッコいい方がいいじゃないですか」って、冗談みたいなことになっている。

 何せ、リラックマから大沢たかお&生田斗真へという、およそあり得ないバトンタッチだ。そりゃ一体どんな変化なのかというスタイルは「ん、イスト?」が瞬速イメージだった。

 実際、横長のいかついヘッドランプによるフロント回りや、逆三角形のリアランプで固く締められた後ろ姿は現行イストそのもので、それを結ぶルーフラインの曲面やウエストラインの低さから、なんとかヴィッツっぽさが残った感じなんである。

 イストの固さを持って来たかったのか、キーデザイナーが同じなのか。ライフ同様男性向けなんておかしな発想はもちろん、その結果、先代、ましてや初代には遠く及ばない完成度の低さを招いてしまうようじゃあ、本末転倒も甚だしい。最近のトヨタ車共通の、もはや神経症的に入り組んだラインのバンパーも含めて、要素ゴッタ煮、意味不明状態だ。


 
 いや、百歩譲って男性向けスタイルがありだとして、そのインパネやドアハンドルの色をちょちょいと“可愛い”色に変えて、こっちは女子向き≪Jewela≫ですよって、ナメてんのかって思うでしょう、フツー。いや、近頃随分と増えた女性評論家とかはマジで怒らないとダメなんじゃない?

 そういう、コンセプトそのものが疑問なところに、たとえばセンターメーターを中心に独自の世界を持っていたインテリアが「パッソ再び」の悪夢で壊滅状態だったり、VSCの設定がほとんどなかったりするのを見ると、一体このモデルチェンジは何なんだと思うじゃないか。

 トヨタによると、ヴィッツは世界戦略車でなく、今後は日本や欧州へ市場を絞り込むらしい。新興国にはエティオスなど、よりコストダウンを図った商品を用意するんだろうけど、そのヴィッツがこれなの?と愕然とする。

 初代ヴィッツは、エンジンなど各々の性能はともかく、全体のパッケージとしてトヨタの本気を見せつけた傑作だったと思う。とくにギリシャ人デザイナーの作と言われるエクステリア・インテリアデザインの完成度は高く、いまでもまったく旧さを感じさせないし、もちろん男女不問の普遍性を持っていた。

 もし、ユーザーが「これは女の子っぽい」などと言ったのなら、それは単に日本のユーザーの感性が低いだけだ。そんな偏った商品だったら、欧州カー・オブ・ザ・イヤーには選ばれないだろうし。

 それが、わずか2代でこの有様だ。作りこみを見切ったあのマーチをブッチ切りするかと思ったら、そうじゃなかった。そりゃあ、業界再編だのリーマンショックだの、円高だの、いろいろ情勢変化はあったにしろ、初代の志のまま11年を経れば、トヨタがポロを作っていたかもしれないのに。

(11/01/01 すぎもとたかよし)

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