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新しいスイフトを見て思うのは、同じく新しいマーチとの立ち位置の違いと、その面白さかな。
たとえば内外装。
日産のエクストレイルくらい“変わった感”がないスタイルは、しかしエクストレイル同様、よく見れば面の変化などしっかりした進化が分かる。全長やホイールベースの延長に合わせるように前後へ延びたフロント・リアランプだけじゃなく、たとえばボンネット両端からグリルへ流れるU字ラインが、リアハッチでしっかり反復されているのも見所だったりする。
例のAピラーはデザイナーが最後までボディ色にこだわったらしいけれど、このフォルムにするんだったらブラックアウトで正解だったと思う。もちろん、流行のワンモーションスタイルにするとか、別の提案だったら話は別だけど。
インテリアは著しい質感向上が各方面で好評だけど、造形としてフラッグシップのキザシとしっかり共通性を持たせたところが見識じゃないかと思う。もちろん、この辺は欧州市場なんかを意識しているんだろうけど、ブラック以外があればなおよかったのにね。
1点だけ、比較的大きく変わったリアハッチは、先代の左右ランプを結ぶ端正なラインの方がデザイン上の理由が明確でよかった。もしかして、ドアハンドルを表に出したくなかったのかな?
で、こうして評価の高かった先代を踏襲し、さらにブラッシュアップして質の向上を目指すのがスイフトなら、歴代の高い評価を踏まえず、コレといった特徴のない曖昧なスタイルとなったのがマーチかと。
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サイドグラフィックなど、先代をイメージさせる要素はあるものの、リアビューを筆頭に全体でのまとまりを欠いているし、曲面を多用したインテリアは、その樹脂素材に何とも言えないチープ感がある。
たしかに、プラットフォームは両車とも更新しているし、ミッションも基本同じ新型だ。マーチは加えてエンジンも新開発だしアイドリングストップもある。
だから、使っている技術力に大きな違いがあるわけじゃないんだけど「厳しい欧州市場で評価される商品なら世界でも通用する」という発想と、「世界戦略車として、生産も新興国を中心にグローバルに展開してコスト低減を図る」という視点では、完成した商品にこれだけの差ができてしまうのか、という面白さなんである。
もちろん、マーチが本当にコスト削減に成功しているなら、同じ120万円で売ってもスイフトよりずっと身入りはいいんだろうけど、買う側からしてみればあくまで同じ120万円だしね。
個人的な要望としては、よりトルクフルなエンジンがあればと思う。「スポーツ」みたいに回して稼ぐんじゃなくて、たまの4名乗車でもゆとりのある高トルクエンジン。欧州ではディーゼルがその役目なんだろうけど、ガソリンでもいいから過給エンジンがあるとよかったな。
それはともかく、たとえばドアの遮音シールを二重にするとか、ホントに着実な質の向上を目指したスイフトが、それこそ欧州や新興国でどんな評価を得るのか、それはマーチとどう違う評価なのか。そのあたりがとても楽しみなんである。
あ、そうそう。後席シートベルトとか、欧州と日本で仕様を変えるようなことをしなければさらによかったのにね。
(10/10/09 すぎもとたかよし)
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