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突如発表されたマツダのコンセプトカー「靭(しなり)」、僕はとてもいいと思う。
風などの波を表現した一連のコンセプトカーは、これまでマツダ各車に順次応用されて特徴をつくってきた。とくにグリルやヘッド・リアランプ、あるいはフォグランプベゼルなどで効果を発揮し、いわゆるファミリーフェイスを構築した。
けれども、全身にその要素を採り入れた新型アクセラで少々暑苦しさを感じ、ついに新しいプレマシーで「まんま」をやってしまったことで、いよいよこれは行き詰まったなあ、と思っていたんである。
そこに登場したのが「靭」だ。
チーフデザイナーの前田氏は、堅い鋼をネジったような、などと新しさをアピールするけれど、僕自身あまりそうは感じていない。
ボディに異なる方向からの勢いを加えて動感を出すのは、実は前田氏が数年前に手がけた現行デミオでしっかり表現しているんである。例のフロントホイールアーチのフレアや、そこから続くキャラクターラインの初導入でもあったけれど、全長の短いデミオは、それによってAピラーの前後で異なる動きが生まれていた。
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「靭」は、たしかに動きの衝突がよりダイナミックに表現されているし、欧州流行の4ドアクーペ調でかなり派手な出で立ちではあるけれど、僕の個人的な感想としては、だからまとまりのいい現行デミオの要素がパワーアップして戻ってきた感じだ。
ここまで明確にコンセプトカーとして表現している以上、このパワーアップは間違いなく市販車に反映するんだろうけど、それよりも、もしかしたらこのシャープなラインの方が、より新しさをアピールするかもしれない、なんて考えたりもする。
まあとにかく、苦しかったプレマシーに続くニューモデルが出る前に、こうした新提案なり軌道修正が発表されたことは、実にいいタイミングだったと思う。
いや、もちろん、そんなこと当のマツダはすっかり折り込み済みだったとは思うけれど。
(10/09/21 すぎもとたかよし)
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