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タイからの逆輸入車ってどうなんだ、という話自体は買う人が決めるのでまあいいかなと。
追浜に入念なチェック体制を敷いた品質管理も、現車を見れば100万円前半のコンパクトカーとしちゃあごくまともだ。そもそも、パッソ・ブーンの惨状を見れば、少なくとも見た目で日本製の絶対的優位とかは意味なさそうだし。
それよりも、気になるのは日本市場での「商品性」なんである。
初代からジウジアーロを起用して実用性の高さをアピールし、2代目はその作り込みのよさから欧州イヤーカーを獲得。3代目は苦しいときのデビュー故、質感こそ落としたけれど、斬新なエクステリアでしっかり8年間を引っ張った。
そうやって自動車先進国で確固たる地位を築いたマーチ(マイクラ)が、今度は新興国を含めたグローバルカーとして位置づけられる。1台のクルマでとんでもなく幅広いフィールド勝負に挑戦する。それが興味深いんである。
タイなど生産国を含めた新興国での低価格なファーストカー、欧州での高速走行や合理性を求めた実用車、日本でのお洒落なコンパクトカーと、期待される要素がいろいろ違う。それって可能なのか、果たして日本市場での商品性は確保できるのかな、と。
たとえばスタイリング。リアまで続く力強いショルダーラインは、欧州市場で狭さをイメージさせた先代の反省に則ったものらしいけれど、一方で先代から引き継いだ半円のサイドウインドウが日本でのマーチらしさを継承するべく両立を目指している。
写真では先のパッソとそっくりなんて言われてたフロントは、結構な立体感を持たせたランプ周辺や、いまどきの欧州車風グリルでもって、実車では別段似てると思わせないし、ずっと豊かなボリューム感がある。
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先代の12色にこそ届かなかったけれど、9色のボディカラーと3種の内装色は意外に頑張った感じで、日本市場特有の女性ユーザーも含めた取り込みができそうだ。
そして、マツダに比べてあっけなく量販グレードにも採用したアイドリングストップシステムと、それによるリッター26キロの数字も分かりやすい商品性として受け入れられると思う。この量販グレードなら、秋に登場と言われているフィット・ハイブリッドよりも数十万円は安いだろうし。
パッと目を引くスプリング・グリーンのセールスカラーも含め、だからグローバルカーとしては意外なほど日本市場に合わせ込んで来た、うまいことやったなあと思う。
けれども、じゃあ満点か? というとそうでもない。
たとえば、いろいろな要素を取り込んだスタイリングは歴代でいちばんまとまりがない。とくに先のシリンダー状ショルダーラインが中途半端に消えてゆくリアランプ周辺の未処理な感じは、このデザインに普遍性がないことを露呈している。頑張ったとは思うけど、歴代の完成度に比べちゃうとね。
インテリアも20万円の差があるとはいえ、量販グレードと上級グレードの差があり過ぎだ。こういうやり方を一体いつまで続ける?
後席3点シートは奢ったのに、サイドエアバッグが全車標準じゃないのは中途半端だし、聞いたことがない銘柄のタイヤは、ユーザーに品質の「目安」を想定させ得ない。
いや、そういうクルマじゃないから、VWポロとは違うんだと日産は言うのかもしれない。だったら、それはマーチとポロが違うのか、それとも日産とVWが違うということなのか。そこんところが気になる。
まあ、それこそ欧州仕様の「商品性」でその点はハッキリするってことかもしれない。ウワサのスーパーチャージャー版もまずは欧州投入って話だし、各装備についても要注目かな。
(10/07/21 すぎもとたかよし)
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