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コラム&レビュー

新車心象風景:スバル・ルクラ/プレオ

 
 いまさら正面からアレコレ言うような話じゃないと思うんだけど、たぶん、これでどれだけの人が幸せになるのか?という問題なのかもしれない。


 ビックラしたのはこっちだよ、のルクラ。プレオを名乗るならピラーをブラックアウトしてそれっぽいエグゼだろ、というツッコミが全国各地で展開されてるかとは思う。


 日産だってOEMじゃん、なんて妙なことを書く評論家がいるけれど、そもそも軽がなかった日産とは状況がまったく違うんである。仮に日産がコンパクトやめて、トヨタからパッソもらって「これ、新型キューブです」っていうことでしょ、これ。

 で、とりあえず僕はこの2台がスバル車になったことで、とても幸せになった人ってあんまりいないんじゃないかと思っているんだけど、どうでしょうね?

 もちろん、何だかんだで月に3000台や4000台は売れるかもしれない。けれども、その中身はどうなのかと。やった、こんなスバル車を待っていた!なのか、車検で買い換えだけど他に選択肢ないし、結構広いからこれでいいか、なのか。

 つまりは、北米から新興国や一部欧州に飛び火しているリコール問題のような話も困るけれど、傘下にした歴史あるメーカーにこういう商売させちゃうようなトヨタの経営姿勢も、実は同じくらい大きな罪なんじゃないかと。


 
 もともと狭い島国に6社も7社もメーカーがあるのが奇跡的なわけだけど、ついに時代がすべてのメーカーの独立を許さなくなってきたと。そこで大が小を吸収するわけだけど、そのときに大にはそれなりの責任も発生する筈。つまり、小にどれだけ期待以上の商売をさせるかという。

 けれども、そういうところまで平気で「ツマラナイ」ものにして行くのであれば、これはホントに罪深い。ここで引き合いに出すのが適当かは?だけど、たとえばVWグループの慎重な経営戦略に比べると、あまりにものごとを簡単にやり過ぎじゃないのか。クルマという自らの商品や、あるいは企業の歴史というものをあまりに軽く見てるんじゃ?

 いや、これはあり得ない話だけど、仮にスバルが「Rシリーズを終えてすぐにでも軽が2台欲しい、もうこの際なんでもいいから早く用意してくれ」と言ったとする。だとしても「ちょっと待って。歴史あるスバルブランドとして売るんだから、ここは可能な範囲でエクステリアくらい変えようよ。ま、費用は相談ってことで」くらいのことを言うのが親方のあるべき姿なんじゃないのか?

 で、いったいどれほどの人たちがこのOEMで幸せになったんだろう? さらには、これで日本のクルマ社会がどれほど充実したんだろうか? もちろんトヨタや供給するダイハツ関係者は別としてね。スバルディーラーは「売れそうなのが来た!」って小躍りしたんだろうか。

 すでにデックスという前科があるわけだけど、なんだかこう、べつに多くの人が幸せになるわけじゃないし、日本車史的にも残念なことが、まあビジネスだから、流れを考えればこういうもんだからっていう次元で、淡々とくだらない方向へ向かう虚しさを感じるんである。ま、その歴史感のなさがいかにも日本人っぽいと言えばそうなんだけど。

 いや、提携はお互い様の部分もあるから、片方だけを云々するのはアレなんだけど、やっぱり主導権は親方にあるからね。

 F1はもちろん、クルマの味とか言って新型ハチロクだG'sだ騒いでいるけど、言ってるそばから“クルマなんてこんなもん光線”全開じゃん、トヨタ。

(10/05/06 すぎもとたかよし)

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