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コラム&レビュー

新車心象風景:三菱・RVR

 
 三菱ってどういうメーカーなんだろう? なんてことを改めて考えさせるんである。


 評論家諸氏がコンパクト、コンパクトって書くわりに結構デカイSUVルックは、おそらく欧州の市場をメインに意識した企画なんだと思う。ギャランフォルティス、デリカ、アイと、ダイムラーの縛りからとき放たれたデザインチームが送り出した佳作達の中では、とくにフォルティスと同系統の香りがする。

 ま、皮肉にもメルセデスを彷彿とさせる唐突なキャラクターラインと、全長を抑えるためかスッパリ切り落とされたフロントのせいか、何となく寸詰まり感があるのは惜しいところだけれど。

 そのフロントは例のジェットファイターグリルで、これ、日本のユーザーには「怖い」という反応が結構多いとか。まあ何たって初期モチーフがゼロ戦だっていうんだから怖かろうて。けれども、三菱のアイデンティティーとして、海の向こうではこれくらいが役立つのかと。

 何だか鉄板厚そう、という外装も、楽しくはないけど丁寧に作り込んだ内装も、言ってみれば三菱のいい面なんだと思う。「次のコルトは?」の質問に「いやあ、まだ8年ですから」と答えたディーラーマンじゃないけど、滅多にない新型車だからこそかと。

 なんだけど、じゃあ、強いてRVRを選ぶ理由とは何なんだろう? ライバルのデュアリスやエクストレイル、RAV4、CR-V、フォレスターじゃなくてこれにする理由って。

 何だか、僕にはそれこそ先代RVRとかシャリオ、パジェロあたりからの買い換えを含めた三菱車オーナーなり、根っからの三菱好きしかイメージできないんである。かつてのパジェロやいまのeKワゴンが幅広い支持を受けたのとは違って、このRVRを含めたそのほかの車種はとても間口が狭い気がしてしまって。あ、アイはまた別の理由で狭いけれど。


 
 それは商品単体のこともあるんだろうけど、たぶんラインナップ自体にも問題があるんじゃないかと。厳しい状況下、非常に限られた商品の中でパジェロ、トライトン、アウトランダー、デリカ、RVRとクロカン・SUVが5車もある。これはかつてパジェロやその兄弟でブイブイ言わせた「アウトドアの三菱」の栄光を引きずっているのかと。

 けれども、それがすでに時代からズレているのは周知のとおりで、だから三菱自身もフォルティスやコルト、あるいは軽を用意しているんだけど、結果としてはクロカン四駆中心のような、そうでないような中途半端な商品群になってしまっている。

 それでも三菱車を選ぶとなれば、それはもう相応の付加価値を持ったクルマであることが必要でしょう。オンリーワンの魅力が。じゃなければ、いっそ日本版ランドローバーになっちゃうとか、逆にクロカン・SUVやめてeKシリーズのセダンにコンパクト、3列シートミニバンで攻めるとか。

 そうやって腹くくらないと、選択の理由がどんどん見えにくくなって行く気がする。すでにマツダが実践していたり、スバルが模索しているような独自路線を。アウトドア・イメージは捨てたくないけど、フォルティスもコルトもアイも見せたい。あ、ランエボも・・・じゃあちょっとね。

 そんな風に考えていると、結局三菱って何でクルマ作ってるんだろう、というここ15年くらいの僕の疑問がまた湧いてくるんである。170万円台からのRVRはお得かもしれないけど、お得なクルマは他にもいっぱいあるし。

 いや、実際このあたりはそろそろ本気で考えた方がいいと思う。三菱のクルマって何を目指した、どんなクルマなのか? ユーザーに何を提供したいのか。それらが少ないラインナップすべてに反映しているのか?

 そうそう、僕の愛車ジェミニの開発コンセプトの中に、セールスカラーだったセイシェルブルーも含めて“カワセミ”があったんだよね。クルマの開発者は皆そういうのって知ってるかと思ったんだけど、RVRがずばりカワセミブルーなんて名前をセールスカラーにしたところを見ると、もしかして知らなかったのかな?

(10/04/21 すぎもとたかよし)

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