|
CR-Zは、ふたつの理由でいいんじゃないかと思っている。
まず、“一応”メーカー自ら「HVはエコだけで終わらない」と銘打っていること。
クルマ好きの皆さんならご承知のとおり、エンジン+バッテリーのハイブリッドは、もともと動力性能向上のひとつのアイデアだったでしょう。排気量を変えず、効率的なアシストをするということで。
それがいつのまにやらエコの代表みたいな話になっちゃった。要は設定を燃費方向に振ったということだけど、逆に振れば途方もないハイパワーカーになっていたわけだものね。
それをある程度表現した、つまり燃費一辺倒ではない出し方に違和感が薄れたというか。まあ、それにしたって燃費がいいのは事実なんだから、コンパクトカー並の燃費でスポーティクーペを作りましたって素直に言っていいんじゃないかとは思う。
もうひとつは、スポーティカーとしてふつうにアプローチしてること。たとえば車体剛性やサスペンション設定やらステアリングフィールやら、あるいはMTの設定やら。つまり、単にインサイトの着せかえじゃなく、スポーティクーペとしてごく普通に作っていること。
|
|
スタイリングも、キャクターラインはかなり強烈だけど、ずいぶんと分厚いキャビンを、鋭角なサイドグラフィックスとともに目立たないよう巧く処理している。絞り込んだリアのキャビンと豊かなフェンダーの組み合わせなんかも違和感ないし。もちろん、ユーロシビックみたいにプレーン方向にする方法もあったとは思うけど、いまのホンダらしさはしっかり出ていると思う。
面白いのは、未来ちっくなメーター周りが、逆に80年代を連想させるなあと。斬新と子供っぽさが紙一重のアプローチが、当時のある種の勢いを感じさせるような。きっと、こういうのが後年になっても懐かしく語られるんだろうな。
さて話は変わって、じゃあメーカーや雑誌の言うように、このCR-Z(やトヨタの新ハチロク)は、件の「若者のクルマ離れ」対策なるかというと、僕はそう思わない。
そもそも、僕は若者=スポーティカーなんて公式は幻想か勘違いだと思っている。実際、ハイソカーやらスペシャリティーカー、あるいはクロカンブームみたいに、若者の動きなんて一貫性がないでしょ。つまり、若者向け商品という発想自体がおかしい。
だいたい、220万円以上なんて価格のクルマを、たとえば20代の若者が買うってどこか変でしょ。っていうか不健康な気がしない? だったら110万円でスイフトやデミオの廉価グレードとか、先代キューブの中古を80万円でとか、同じく初代ヴィッツを40万円とか、そういうことでいいんじゃないの? 実際、CR-Zの立ち上がりは40,50代がメインって話だし。
まあ、若者に限らず、クーペ市場のない日本じゃなくて、CR-Zは欧米が主戦場なんだとは思う。あちらでのセカンドカーやらOLの足やら、そういう想定で作ったと。あくまでそうやって考えるなら、日本発の最新商品として、このクルマはやっぱり悪くないなと思う。
(10/03/08 すぎもとたかよし)
「日本の自動車評論を斬る! すぎもとたかよしのブログ」へ
|