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■自動車雑誌を斬る!「戦争は無関係か?」

 開戦までは、何となく反戦らしきことを口にしていたTV報道は、武力行使が始まるやいなや、案の定、やれ今日はどこにミサイルが何発落ちたとか、どこの建物が壊れたとか、今後の戦況はどうなるかとか、カメラの前で起こることに対し、その興奮ぶりを隠すことも忘れて、我先にと報道合戦状態になってしまった。
 番組の間、バクダットの様子を生中継しているあの子画面の挿入など、「ああ、いいタイミングでミサイル飛んでこないかなあ」という制作スタッフの願いがそのまま出ているじゃないか。多分そうなるんだろうなとは思っていたけれど、TVはたった10年前の戦争報道批判から何の教訓も受けていないみたいだ。
 そうなると、やっぱりこういうときは活字媒体かな? などと僕は思う。実際、新聞などは少なくともTVより冷静な姿勢を保っているようで、一応記事の内容には一定の視野の幅を感じるんである。
 じゃあ、我が自動車雑誌はどうなってるんだろう?

枠はない筈
 自動車雑誌は自動車の雑誌なんだから、戦争なんか関係ないでしょ。なんて言われそうだけど、本当にそうだろうか?
 だって、戦争反対を訴えているミュージシャンも作家も、そして何よりあちこちでデモを決起しているフツーの市民だって、取りあえず自分の仕事と戦争は直接関係ないでしょう?
 中でも歌手や作家がそういう行動を起こすのは、自分達の知名度による影響力と、発言をする場が確保されているのを自覚しているからに他ならないからじゃないのか。だったら、不特定多数の読者にメッセージを送ることができる雑誌などのメディアも一緒で、自動車雑誌が戦争について発言したって何の不思議もないじゃないか。

やろうと思えば
 いや、どうしても何かの根拠なり理由が必要だというのなら、今度の戦争が石油の採掘権に絡んでおり、結果としてガソリンの価格が高騰するとか、自動車の販売台数にはどう影響してくるのかとか、クルマに関係を持たせることなどはそう難しいことじゃないだろう。個人的には、戦争なんていう人類最悪の行為に対して意志表示をするのに、理屈もへったくれもないだろうと思うけど、冷静を装いたいならそういうアプローチでもいいと思う。


 やはり10年前の湾岸戦争のときだったろうか、月刊誌「NAVI」が表紙に大きく戦争反対の文字を掲げていたことがあった。少なくとも僕はそれを見て変な違和感を感じることはなかったと記憶している。メディアの行為としてはごく当たり前のことだし、逆にどうして「NAVI」だけなのかが不思議だった。
 べつに今度の戦争について何も感じない、反対でもなければ賛成でもない、語ることなんか何もないというなら仕方ないと思う。こればっかりは強制されたり誘導されて発言するべきものじゃない。
 けれども僕はやっぱり何かを発信するべきだというのが率直なところだ。自動車雑誌を愛読する者として、ひとりのクルマ好きとして何かを期待せずにはいられない。なにも冊子の半分を使って戦争特集をしろというんじゃない。ただ、少なくともこの時期この時に、次のレガシィがどんな格好になるかとか、スカイラインクーペとZはどこが違うのかということに数ページを割けるのなら、そのうちの1ページ、いや半ページだけでもいいから何かを発信して欲しいと思っているんである。メディアなら、そして評論家やジャーナリストならそのくらいの社会的な言動くらいしたっていいじゃないか。
 いや、それでもこれはやっぱり大きなお世話なのか?

(03/03/24 すぎもとたかよし)

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