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■クルマのまわりで〜何が「DNA」?

イメージだけ?
 HONDA DNAというキャッチコピーは、アルファベットの「お遊び」から作ったものなんだろうけど、ホンダの四輪の歴史においては「走りのよさ」こそが、その確固たる遺伝子なのだと言いたいのはよく分かる。その四輪車参入早々、いきなりF1へ挑んだり、はたまた初の軽トラックにDOHCエンジンを載せてしまうようなメーカーだ。昨今のタイプRシリーズにもその遺伝子が受け継がれていると言えなくもない。多分そうなんだろう。いや、「多分」なんて言い方をするのは、それがあまりにもイメージに頼っていると感じるからなんである。
 けれども、今度の日産スカイラインクーペのTVCFを見たら、そんな希薄なイメージ戦略など、僕の頭からアッという間に吹き飛んでしまった。

自分の歴史
 昨年デビューのフェアレディZも基本的に同じ手法だったけれど、実際の歴代モデルを美しく見せるやり方は、DNAなどという言葉を使わなくても、そのクルマの伝統をユーザーの記憶から呼び起こすには最も有効な方法ではないか。やっぱり視覚に訴えるのは大きいんである。
 かつて新車のセールスのために、自社の歴代モデルをあれほど徹底して見せるというやり方はほどんど僕の記憶にない。だいたい国産車の場合、たいていは先代を否定することがモデルチェンジの前提だからそれも当たり前だろう。
 この広報戦略を誰が思いついたかは知らないけれど、たとえばダイムラー・クライスラーの資本を受け入れた三菱がコルトという昔の名前を復活させたように、ルノーという外資が入ったことが大きいように僕は感じている。古くからの日本文化を外国人の方が興味を示すことが少なくないのと一緒で、歴史のあるクルマなら、その伝統を生かさない手はないと考えるのは、そういう外野の立場であればこそということだ。

手抜きなし
 新しいシーマやプリメーラ以降の日産は、大々的なリストラによるV字型業績回復だけじゃなくて、製品としてもかなり気合いが入っている。続くスカイラインやステージア、マーチ、Z、キューブ、ティアナと、どれもおかしな手抜きが感じられない。何て言うのか、こっちもイイものを努力して作るから、そっち(ユーザー)も見る目を養っておいてくれよな、と問われているような感じだ。ディーラーにしても、白を基調とした実にクリーンな店舗に統一し、野暮な手書きのポスターやチラシなどは止めようということらしい。要するに次元の低い迎合はしませんよということだ。考えてみれば、そんなことはごく当たり前の姿勢なんだけど、その当たり前のことを多くの国産メーカーはやってこなかったんである。
 そういうことの積み重ねでメーカーのイメージを高めて行こうというときに、単純に過去を否定して「リセット」をするのではなく、自らの歴史を引き連れながら前に進むという考え方に僕は共感する。だから、北米で定着していながら自らバッサリと切り落としたDATSANブランドを復活させることにもまた賛成だ。意地悪く見れば、それは単に「使えるものは使う」という販売戦略に過ぎないとも言えるのだろうけど、それにしたって肝心なのはやり方次第だろう。

 そんなわけで、いま僕はホンダよりも日産にDNAを感じたりしている。そして、その遺伝子を継承しながら、これまで国産メーカーがやってこなかった「当たり前」のことを次々にやってくれそうだという期待もしている。だって、自分の想像を超えたことをやってくれるのが、僕にとって理想的な自動車メーカーなんである。

(03/02/16 すぎもとたかよし)

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