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WiLL・サイファというクルマはずいぶんとクーダラナイ代物だと思うけれど、これをわざわざインプレッションして記事にする雑誌は、もっとクーダラナイと僕は思ったりする。どこも似たようなものだけど、中でも11月10日発売の「ベストカー」に載っているサイファの記事がまさにそれなんである。
■メーカーの遣い
このクルマの「ウリ」はG-BOOKと呼ばれる新しい通信システムと、乗った分だけ支払うという新機軸のリース方式であるそうな。そんなもののために一台のクルマを作ってしまうなんて、何てバカげたことだろうと僕は思うけれど、まあ、それは言ってしまえばトヨタの勝手だ。
だから、それを評する側はそんなモノ放っておけばいいのに、どうしても取りあげてしまう。それが先述の記事なんだけど、これが実に情けないんである。
見開き2ページの記事のうち、8割、9割がそのG-BOOKやリースについての話に終始しているのだ。クルマ自身については、最後の部分でわずかに「ヴィッツベースだから走りは悪くない」なんてことが書いてあるだけだ。しかもだ、信じられないことに、このG-BOOKを楽しみたい人はそんなクルマの出来は関係ないだろうという趣旨のことまで書いているんである。もともとクルマ自体についてはあえて書くことなんてないのに加え、あろうことかそういう事実を評論家が肯定して見せているのである。ついに御用記事もここまで来たかという感じだ。
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■書かなくても・・・
僕の希望はふたつある。いや、別段変わった希望じゃない。
クルマとして評するに値しないようなバカげたものが出たときは、文字通り評することをやめたらどうなのか? 新車だからといって、別に全てを取りあげなくたっていいじゃないか。そういう選択肢があるということを是非とも示して欲しい。何でもかんでも記事なんかにするからメーカーがつけ上がるんである。これがひとつ。
もうひとつは取りあげ方。新車の紹介をしているのに、クルマ自体についてはほとんど書くことがないなんておかしいじゃないか。そんなクルマ変じゃないか。だったら、それがいかにおなしなクルマであるかを書くのが評論家の仕事の筈でしょうに。通信端末やリースが売りなんですというメーカーの言い分を、こうしてわざわざもう一度誌上で繰り返す必要なんかどこにもない。どうしても書かなくちゃいけないのなら、「こんなフザけたクルマを出すなんて、世界的規模のメーカーのやることじゃない」くらいのこと書かなきゃダメだ。それを、クルマはともかく通信を楽しめればいいなどとは、もはやモノ書きの風上にもおけない仕事だ。
メーカーのしがらみやら何やらがあることはよく聞く話だけど、ここまで実のない内容の記事を見てしまうと「仕方ないな」なんて言ってられない。もう「いい加減にしろ!」だ。僕個人の意見としては、もう二度とこんなバカげたクルマを出し欲しくないし、同様に二度とこんな情けない記事を書かないでもらいたい。
(02/11/24 すぎもとたかよし)
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