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基本的に内輪ウケに終始することが多い自動車評論家の活動だから、誌上で衝突が展開されることなんてかなり珍しいと思う。
「AUTOCAR」の3月号なんだけど、フィットとポロのどっちがいいかという連載での話。革新パッケージだけでもフィットを賞賛とする側と、やっぱり骨太なドイツ車とする側が対立、真面目に険悪な雰囲気になっちゃったらしくて、その様子が誌面からも生々しく伝わって来る。
これを読んで感じたことがふたつあった。
ひとつは評価軸。この雑誌はイギリスのものなんで、向こうらしくクルマは「乗ってナンボ」が徹底している。もう毎号比較検討記事に溢れていて、ナンバーワンはどれかみたいなことがメイン。もちろん、我が国のインプVSランエボみたいなお約束対決ばっかりじゃなくて、あらゆるセグメントでやってみせるのがウリ。フィットの理想主義擁護は個人的に理解できるけれど、それがこの雑誌の方向性と少々ズレているというか、何だかいつもと違うけどいいのかなあと。
もうひとつはその険悪な場面をそのまま載せたのは良かったなあと。いや、大の大人がクルマの比較検討くらいで喧嘩するなよというご意見もあるでしょう。あるいは、商業雑誌として編集の段階できれいにしちゃえよとか。でも、それはちょっと違うかも。
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僕らユーザーや読者が「どうせメーカーの提灯記事だから」とか「広告もらってるんだから」なんて物分りのいいことを言うからか、自動車評論、とくにインプレッションってやつはどれもこれも似たような構成に似たような言葉で、ハッキリ言って書き物としちゃあ最低のものが横行してる。
でも、これって考えてみれば仕事なわけで、そこで手を抜いているわけでしょ。たとえば、僕は勉強していない医者に診てもらうのはイヤだし、練習しない選手のスポーツは見たくないし、下手な役者のドラマは観たくないし、サービスの悪いホテルや旅館に泊まるのはイヤ。じゃあ実際にはどうしているかと言うと、その逆に精進して頑張っているところにお金払ってると。
まあ、どの分野にしたって「ま、そこそこでいいじゃん」って話はあるんだろうけど、自動車評論はその幅が広いんじゃないかなあ。普通の商売だったらとっくに潰れるような中身でも、メーカーの傘の下でぬるま湯生活OKみたいな。
そう考えると、険悪になるくらい熱く討論するのなんてきっと当たり前のことなんじゃないかな、本来。だって評論家でしょ。主張のぶつかり合いでしょ。お前、なにフザけたこと言ってんだよって世界だよね。いや、本気なら・・・。
ま、最初は何だコレって思ったけれど、いいんじゃないかな、こういうのは。
(08/01/28 すぎもとたかよし)
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